やなせたかし先生に魅了され、創作活動を楽しむ達人!
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漫画家、イラストレーターであり、紙芝居の制作・上演活動など、
紙芝居文化の普及に取り組んでいるおかもとあつしさん。
その創作活動に大きな影響を及ぼしたのが、アンパンマンの作者であり、
香美市香北町出身の漫画家 やなせたかし先生です。
おかもとさんに、やなせ先生との出会いや人柄、地元愛、
ご自身の活動についてお伺いしました。
まんがを描ける公務員
絵が好きで似顔絵が得意だったおかもとあつしさんは、高校時代に友だちとまんがを描いては回し読みをしていました。「僕が描いた似顔絵が教室の後ろに貼られていました。授業中に先生が教室をぐるっと見回るとき、僕の絵を見てニタッと笑うんです。そのリアクションを楽しむのが好きでした(笑)。」と当時を振り返ります。高校3年の時に文化祭で単独で似顔絵コーナーを行うほどでした。それは大学時代も同じだったといいます。
大学時代にアルバイトで週刊誌の連載をしている漫画家のお手伝いに行った経験もあるそうです。それは3日くらい徹夜状態で描いて、バタッと寝て、おもむろに起き上がってまた次の作品に取りかかるという現場でした。「プロの仕事は大変だなと思いました。ほとんど雑用でしたが、背景を少し描かせてもらった作品の雑誌が発行された時は嬉しかったですね。当時は漫画家というよりは、絵が描ける仕事ができればいいという気持ちでした。」
卒業後、民間会社での勤務を経て、1982年に香北町役場(現・香美市役所)に採用となりました。その後、やなせたかし先生とのご縁ができます。
やなせ先生の行動力に脱帽です
役場に入ってから青年団活動を始めたおかもとさん。香北町の活性化に役立つイベントをしようと、青年団が主催して高知市帯屋町の商業施設で「香北イチゴ祭りin高知」を開催しました。その施設の1階で物産販売、5階は町のPRや抽選会、催しを行います。その集客の目玉となる催しに「やなせ先生の原画展はできないだろうか?」と提案。皆も賛成して交渉をすることに。
「当って砕けろではないですが、直接電話を掛けました。やなせ先生は本当に気軽に『いいよ』といい、当時まだ有名ではなかったアンパンマンの原画など30点ほどをお借りすることができました。おかげで、にぎやかにイベントを開催することができました。その翌年、教育委員会へ異動となり、『香北山里セミナー』の講師をやなせ先生にお願いしました。その時初めて直接お目にかかりました。先生の講演は、プロジェクターでセル画を描きながら歌ったり、物語を話しながら進行するので、僕はセルロイドを渡す役でしたがあまりにもスクリーンがおもしろいので見入ってしまって、先生に早くセルを渡すようせかされましたね(笑)。この講演の中で、『まんがの美術館をつくりたい。手塚治虫先生も宝塚に記念館があるけど、亡くなってからできたから、手塚君としてはおもしろくなかったと思うよ。だから、僕は元気なうちに実現したい』と話されました。それがアンパンマンミュージアムの構想のスタートだったのではないでしょうか。」
1997年、日本漫画家協会賞贈賞式会場にて。向かって左から3人目がやなせ先生、右端がおかもとさん。
やなせ先生と町との話は進んでいき、1997年に「香北町立やなせたかし記念館アンパンマンミュージアム」がオープンします。その前年の11月に財団法人アンパンマンミュージアム振興財団が設立され、準備・立ち上げの責任者として初代事務局長になりました。オープン前、おかもとさんが健康センターセレネの支配人をしている頃、隣接するホテルピースフルセレネに宿泊していたやなせ先生にご挨拶したら「今度、僕の美術館ができたら関わってよ」と笑顔でいわれたそうです。それが現実となり、本人もびっくりしたと笑います。
記念館完成後も、企画展やコンサートなど、やなせ先生の気遣いが伝わってきたといいます。やなせ先生と接して感じたことを聞きました。
「すごく地元を大事にされる方でした。実績や年齢を重ねると人は守りに入るし、お膳立てができてから動くのが普通だと思いますが、先生はいつも真っ先に先頭切って行くタイプ。その行動力にはいつも感心していました。人柄も素晴らしかったです。」
紙芝居の魅力を土佐弁で伝えます
おかもとさんはプライベートで2005年に「高知漫画集団」に入会。県内の漫画家との交流を深め、似顔絵のイベント等にも参加し、活動を続けています。また、2007年にはやなせ先生が推薦人の一人になり、日本漫画家協会に入会。翌年、51歳で市役所を退職して、漫画家、紙芝居普及活動に専念します。
「やなせ先生に報告したらとても驚かれて『漫画じゃ食えないよ。勤めながら描いた方がいいんじゃない?』と心配をしてくれました。いろんな思いがあって決めたことですし、もしだめなら田畑もあるので農業をしますと答えると、『田畑があるの?じゃあやればいいよ。だめなら農業をしたらいい(笑)。』とおっしゃってくれました。」
「紙芝居は昔話の楽しさ、土佐弁の良さ、話を創作する楽しさがあり、演じる側とお客さん同士が共感できるもの。この良さを子どもたちに伝えていきたい」と、おかもとさんは普及活動に力を入れています。小学校の児童クラブや図書館、公民館など、年間で約70公演。おかもとさんのよく通る声と、テンポの良い土佐弁での紙芝居。子どもたちが、絵や語りに引き込まれ見入っている姿が浮かんできます。
まんがや似顔絵、紙芝居にプラスして、工作教室の開催や絵画制作など、自らのジャンルの幅を広げ、挑戦を続けているおかもとさん。最後に、高知のまんが文化についてお伺いしました。
「先人たちの積み重ねてきた歴史がありますし、よそにはない高知独特の文化だと思います。反骨精神があるでしょう。夕刊の出放題が好きですが、お上に物申すみたいな。風土が漫画家にむいているのかなと思います。また「まんが甲子園」などを通じて、漫画家を目指す若い力を育てていこう、後押ししていこうとする、高知県や高知市など行政の力は大きいと思います。高知新聞の「まんが道場」には老若男女が応募します。子どもから80歳、90歳のおじいちゃん、おばあちゃんがまんがを描くんです。それが、普通にできている高知県というのは誇るべきものがあると思います。」
おかもとあつしさんプロフィール
1957年、香北町(現・香美市)生まれ
漫画家、イラストレーター、紙芝居作家として創作活動を行うとともに、県内を中心に紙芝居上演活動を行い、紙芝居文化の普及に努めています。
第6回4コマまんが大賞において高知市長賞、手づくり紙芝居コンクール最優秀賞5回、ほか入賞多数。
公益社団法人日本漫画家協会会員。紙芝居座へんしも代表。
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