黒ちゃんの「漫画こぼれ話」 第1話     黒笹慈幾

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更新日 : 2016/02/19

「人間交差点ベストセレクション」原作/矢島正男、作画/弘兼憲史(小学館)を読む。自分が編集者として担当していた作品に30年以上の時を経て出会うのは奇妙な気分である。タイムマシンに乗っているような感じといったらいいのだろうか。ストーリーはほとんど覚えていないが、たくさん泣けた。涙こそ大量消費したが、読後感は爽快である。かなり得をした気分である。
コミックというメディアを使って、「やろうとすればここまでできるんだぞ」と、宣言し、意欲的に社会を切り取ろうとした当時の原作者と漫画家、そして編集者の「熱」を感じる作品群である。(やや自画自賛ですかな)。


え

このころの弘兼憲史さんの年齢は30代前半、矢島正男さんも同じくらい、私は20代の後半だった。弘兼さんはまだ大ヒットといわれる作品はなく、矢島さんもテレビのシナリオライターをしていたが、まだ下積みの境遇を脱していなかった。だからふたりとも「世の中をあっと言わせるようないい作品を書いて 世間に認めてもらおう」と必死だった時代といっていい。

一方、私のほうは編集部の大先輩たちが付き合っている既存の漫画家や原作者とは違う新しい才能を発掘することに必死になっていた。私は私でコミック編集者としての社内や業界の評価を手に入れたくて必死にもがいていた時代といえるでしょう。

 

「人間交差点ベストセレクション(上)」のあとがきで、矢島正男さんはこう書いています。

<連載が始まったころは編集者の間で評判が悪くてねえ。「こんなのマンガじゃねえよ!」って。でも、これは私にとっては「褒め言葉」だと思っていました。つまり「周囲からの圧力が自分のエネルギーの源泉になる」という、これは団塊の世代特有の病気ですね。明らかに>

同じく「人間交差点ベストセレクション(下)」のあとがきでは弘兼憲史さんがこう書いています。

<デビューしたのが1974年ですから、「人間交差点」がスタートしたのは漫画家になってまだ5年。結婚前に連載が始まって、結婚して、連載開始から約2年後に初めての子どもが生まれて。ようやく漫画だけで食べられるようになってきたけど、いつ出版社に切られるか分からないと、不安を抱えていた時代でしたね>

3人とも三人三様の個人事情を抱えながら、団塊の時代に生まれた自分自身の「存在意義」を周囲に認めてもらいたくて、はからずも「人間交差点」という人生交差点に集まったといえるかもしれません(笑い)。

 

さて。今年も漫画家が大挙して高知にやってくる。3月5日(土)と3月6日(日)の両日、「第2回全国漫画家大会議」に招待された20名近いプロの漫画家たちが高知市に集結する。

漫画家というのは「忙しい」を絵に描いた、いや漫画にしたような人たちで、ほぼ毎日、24時間(もちろん寝る時間はありますが、ときにはそれすらも削って) 締め切りに追われる生活を送っている。そういうプロの漫画家集団が一度にまとまって高知にやってくるということは素晴らしいことだ。

今年は 弘兼憲史さんも来ていただけることになった。漫画家として不安を抱えながら描いていた「人間交差点」のあと、「課長 島耕作」「黄昏流星群」などの大ヒット作を世に出し、今や押しも押されもしないコミック界を代表する大作家になっている。その弘兼さんに東京ではなく、この高知で久しぶりにお会いできるのを楽しみにしている。

 

黒笹慈幾プロフィール
1950 年東京生まれ。1974年小学館入社。ビッグコミックオリジナル編集配属。担当編集者として西岸良平「三丁目の夕日」、北見けんいち/やまさき十三「釣りバカ日誌」、弘兼憲史「人間交差点」などヒット作を手がける。その後少年サンデーを経て1981年「ビーパル」創刊スタッフに参画。1995年「ラピタ」 創刊編集長、1998年より2003年7月までビーパル編集長。
自他ともに認める「釣りバカ」で、ビッグコミックオリジナル勤務時代は人気コミック「釣りバカ日誌」の初代担当者として作品作りに関わり、主人公の「浜崎伝助・通称ハマちゃん」のモデルとして、ごく一部の人たちの間で有名だった。
定年退職を機に高知へ移り住み、南国生活技術研究所を設立。現在は「まんが王国・土佐推進協議会・まんが王国推進部会副部会長」としてまんが文化を普及・啓蒙・顕彰する「まんが王国・土佐」高知県のお手伝いをしている。

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