月ヶ瀬ゆりの先生インタビュー

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更新日 : 2017/01/04

第6回まんが甲子園に出場し、今年、第25回まんが甲子園にてOG代表の挨拶を務めた漫画家月ヶ瀬ゆりの先生。
コミカライズを中心に乙女系まんがを手掛ける先生に、プロになるまでの道のり、また「まんが甲子園」について伺いました。


メイン

プロの漫画家への道

●漫画家になるまではどのように過ごされていたんですか?

 小さい頃からまんがを描くのが大好きで、小学校4年生の時に近所のお姉さんが同人誌をくれたんです。初めて同人誌を手にした時は、「自分で描いたものをコピーしてホッチキスで止めたら、まんがになるんだ!」と、ただただ驚きで、それから近所の文房具屋さんに行って、画材などを少しづつ買い集めていました。そして、小学校6年の時の「卒業記念に!」と、友達と一緒に初めて同人誌を作りました。
 中学校に上がると、私の住んでいた兵庫県では中学生から参加できるちょっとした同人誌の即売会があったので、当時好きだった作品のパロディを描いてそこで出したりもしていました。
 高校進学となり、「大好きな美術の道を目指したい」と、いうことで、県内の美術科がある高校に進学しました。高校卒業後は大阪のデザイン専門学校に入学したのですが、自分の思っていた内容が学べないことが通ってから分かって、半年で辞めてしまいました。そこからは、独学で勉強して、デザインの会社に入社し、ロゴやチラシを制作するDTPデザイナーとして3年間、仕事をしていました。

 


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●漫画家としてデビューしたのはいつ頃ですか?

 前職に務めていた時、日を追うごとにまんがを好きな気持ちが押さえきれなくなってしまって。会社を辞めて、その後2年間は、同人誌や投稿作品を作りつつ、お金を貯めて、24歳の時に上京し、派遣とまんがのアシスタントをしながら出版社への持ち込みを行っていました。
 そして、25歳を過ぎた時に、出版社へ持ち込みに行って言われた一言が私の中にすごく残っています。「君、今まで何してきたの? ここに何しにきたの? この絵でこの歳だったら、うちでは一生使えない。君よりもっと若くて上手い子が出てきたときには絶対そっちを選ぶよ。だから他社で枠があるところに行きなさい」と言われたんです。その時はすごく落ち込んだんですが、確かにそれはその通りだと思ったんです。
 それからは出版社と読者のニーズを考え、自分の作品が求められる隙間産業を探しながら営業活動をするようになり「他の作家さんが忙しくて落としてしまった時に代わりに掲載できる原稿」(以下「代原」)の枠を狙って「代原が出やすそうな出版社」を探し、持ち込みを行っていました。そして27歳の時、その狙いが当たりKADOKAWAのブランドカンパニーであるエンターブレインが発行していた月刊誌「comic B's-LOG」でデビューすることができました。

 

 

●まるで営業マンみたいですね(笑)

 本当にそうなんですよね。最近では企画書を作って持って行っているぐらいなので! 「御社ではこういうメリットがあるので、これぐらいの数字が見込めますがいかがでしょうか!」みたいな感じでプレゼンをしてます(笑)

 

●今までそういうお仕事をされていたんですか?

 派遣の時に販売の仕事などをやっていたんですけど、当時、ランドセルを一番売った派遣社員として有名になっていたこともありました。

 


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●すごいですね! では、今、漫画家という職業は絵を描くスキルだけではなく、自分を売り込む営業力も必要となってきているんでしょうか?

 そうですね。「一概にすべてが」と、いうわけではありませんが、その人のプレゼン次第で仕事がもらえるかどうか、決まることもあると思います。

 

●創作活動はどのようにされていますか?

  基本的には取材ですね! 私は自分の中から溢れ出るオリジナリティのようなものがあまりないので、どちらかというと色んな方から話を聞いて、それを基に作品を作っていくのが好きなんです。
 例えば以前に連載していた「オトメマニア!!」では、私の周りに乙女ゲーム業界の方が多くて、これを題材にしたらすごく「面白そう!」と、思ったのをきっかけに、友達や知り合いに取材をして完成したものなんです。普通に話を聞くだけや調べたりするのではなく、取材をすることで裏話をたくさん聞くことができ、作品にリアリティを持たせることができるんです。

 

●先生の作品にはコミカライズが多いですが、あえてそういうお仕事を引き受けているんでしょうか?

  はい。取材に行ったりもそうなんですが、人と何かをするのがすごく好きなので、最初からコミカライズのお仕事がやりたくて漫画家を目指しました。「私がコミカライズをすることで、その元となった作品をもっと盛り上げられたらいいな」と、思っています。そういった経緯もあり、コミカライズのオファーが来た時は、原作やゲーム、派生物も全部チェックして勉強しています。なので、どんなファンの方が観ても原作からの抜けが無いように描いているので、多くの皆さんからもご好評いただいています。

 

まんが甲子園について

●高校生の時にまんが甲子園に参加されていたと伺いましたが、その時のことを憶えていますか?

  もちろんです。高知県に行くための旅費などをまんが甲子園側が負担してくれるということに、とても驚いたのを憶えています。
 あと、私たちは本戦の一回戦で落ちてしまって、敗者復活戦に参加したのですが、疲労や時間への焦りがある中、深夜まで創作活動が続き、かなり大変でした。でも、その時が一番みんなで団結し、絆を強くすることができて、すごく良い思い出となりました。

 

●今年、第25回まんが甲子園のOG代表として、久しぶりにまんが甲子園の会場に足を運ばれてどう思われましたか?


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  今回は、私の夫(漫画家・しろ先生)が元々、審査員として来ることになっていて、ちょうど私もまんが甲子園のまんがを描きたいと思っていたので、連れて来てもらったんです。
 実は、まんが甲子園に行くまでは体調を崩していたんですが、会場に足を運んで高校生たちと触れ合っているとすごくパワーをもらえたんです。また、学生たちがまんがを描いている姿を見ていると「やっぱり一つの作品を作るのっていいなぁ」と、思うようになって、その2週間後には企画書を作って営業に行けるぐらい元気になりました。

 

●今回のまんが甲子園で印象に残っていることはありますか?

 審査中の風景を見させてもらうことができたんですが、審査員それぞれの視点が全然違うんです。伝統的なものが好きだったり、尖っているものが好きだったり、世代によって違ったり。皆さん選び方が全然違っているんです。でも、その中でも票が集まる作品っていうのはあって、「人の心を動かす作品に考え方や年齢は関係ないんだな」と、改めて考えさせられました。

 

●最後に、まんが甲子園に参加する学生達にアドバイスをお願いします。

 まず伝えたいのは「風刺と啓発は違う」と、いうことです。まんが甲子園が求めている作品というのは、1枚の絵の中に様々なストーリー性を感じられたり、一目見ただけで見た人に何かを訴えかけてくるものだと思うんです。例えば、今回テーマに「情報流出」っというのがあったんですが、「蛇口をひねったら情報が漏れてきている」という作品が多かったらしいんですが、それは「ただの啓発ポスターだよね」と、いうのが審査員側の考え方。そうじゃなくて、もうちょっとひねりの利いたものが求められているんだと思います。ただ、ありのままを伝えるのではなく、観る人の中に入り込んでくるようなもの。そういった作品を創作できるようになれるといいですね。
 あとは「まんが甲子園を目一杯楽しんで欲しい」と、いうことです。今回、敗者復活戦に参加する学校への激励に伺わせてもらったんですが、最後まで楽しんで「頑張ろう!」という気持ちで挑んでいる学校は通ってるんです。逆に「どうしよう」と、お通夜状態になってた所はやっぱり落ちていて。そういう気持ちのテンションというのも絵に表れるんだと思います。だから、最後まで楽しんで、悔いの残らないよう頑張って欲しいと思います。

 

プロフィール
兵庫県出身、埼玉県在中の女性漫画家・イラストレーター。
社会人を経て27歳の時に月刊誌「comic B's-LOG」(エンターブレイン)でデビュー。その後「ニックシャドウの真夜中の図書館」(ゴマコミックス)や「OZMAFIA!!」(アクションコミックス)、「東京レイヴンズ ANOTHER×holiday」(ドラゴンエイジコミックス)、「オトメマニア!!」(シルフコミックス)と数々の作品を手掛けている。
また、最近では専門学校などの講師も務める。


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『オトメマニア!!』全2巻

シルフコミックス
月ヶ瀬ゆりの
発行:株式会社KADOKAWA アスキー・メディアワークス

●商品ページ
http://dc.dengeki.com/newreleases/978-4-04-869285-4/

●試し読み
http://dengekionline.com/comic-trial/1502/978-4-04-869285-4/?page=1

 

『東京レイヴンズ ANOTHER×holiday』全1巻

ドラゴンエイジコミックス
原作:あざの耕平 キャラクター原案:すみ兵 漫画:月ヶ瀬ゆりの
発行:株式会社KADOKAWA 富士見書房

●商品ページ
http://www.fujimishobo.co.jp/bk_detail.php?pcd=321406000065

●試し読み
http://www.fujimishobo.co.jp/sp/201009TR/

 

『OZMAFIA!!』全3巻

アクションコミックス
原作:Poni-PachetSY/HOBIBOX 漫画:月ヶ瀬ゆりの
発行:株式会社双葉社

●商品ページ
http://webaction.jp/webcomic/ozmafia/

●試し読み
http://webaction.jp/webcomic/ozmafia/

 

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