漫画家 村上もとか先生インタビュー
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第15回手塚治虫文化賞マンガ大賞など、受賞歴多数。
今、日本の漫画界をリードする漫画家の一人である村上もとか先生に、
全国漫画家大会議のこと、ぽけまんへの想い、
高知の印象などについて伺いました。
まんがはブームを巻き起こす
1972(昭和47)年に投稿した作品が編集者の目にとまり、「週刊少年ジャンプ」(集英社)の『燃えて走れ』で漫画家デビューした村上もとか先生。81年には「週刊少年サンデー」(小学館)に連載を開始した『六三四の剣』が大ヒット。テレビアニメ化され、子どもたちの間に剣道ブームをまき起こしました。91年からは「ビッグコミックオリジナル」(小学館)に『龍-RON-』を発表。歴史活劇タッチで描写され、15年にわたる長期連載となり、小学館漫画賞青年一般部門受賞などに輝きました。この作品は、村上先生の代表作となっただけでなく、漫画家としての活動に大きな転機をもたらしました。
『龍-RON-』と並行して、人の心を読むことのできる少女を通して現代社会に生きる人々の心を描いた「小学六年生」(小学館)の『ミコ・ヒミコ』や戦前のフランス美術界をテーマにした「モーニング」(講談社)の『メロドラマ』など、幅広い作品を発表していきます。
精力的な活動の中、2000(平成12)年から連載した「スーパージャンプ」(集英社)の『JIN-仁-』は、幕末にタイムスリップした医師の目を通して人間の尊厳を描くなど、熟練したドラマ性が高い評判を呼びました。また、テレビドラマ化(TBS系、大沢たかお主演)されると高視聴率を記録。話題を集めます。
そんな村上先生が、2017年3月11日(土)~12日(日)に高知市文化プラザかるぽーとで開催された『第3回全国漫画家大会議』に参加しました。この2日間は多くの漫画家の先生にお集まりいただき、トークショー、まんが大学、ライブドローイング、アシスタント体験、サイン&握手会、交流イベントなど、県内外のまんがファン参加型の内容がたくさんあり、こうしたまんがに対する高知県の取り組みを「非常に面白い!」と評価してくださいました。
全国漫画家大会議のフェスティバル化
村上先生は、参加当日の様子を振り返りながら、
「管理・運営等がきちんと行われていると感じましたね。特に印象に残っているのは、横山隆一先生の記念館スペースの展示です。その充実ぶりには正直、とても感心しました。」
と話します。ただ、子ども連れのファミリー層や、観光客の参加が少なかったことが気になったようです。
「町の中心から会場まで、少し距離があるせいでしょうか?それとも、まだ宣伝が足りないということでしょうか?
私は、多くの有名漫画家を輩出した県として、自治体が率先してまんが文化をフェスティバル化する高知県の試みは、非常に面白いと思うんです。だからこそ、幅広い層の動員が実現していないと感じて、ちょっと残念でしたね。さらに今後は、他県からも是非参加したくなるような、フェスティバル感を一層高めることが必要なんじゃないかと思います。例えば、一般のまんがファンが運営するコミックマーケットなどと連携を強めてみたらどうでしょう。プロに絵を描かせたり、展示するだけでなく、一般の人がその場で絵を描いて表彰されるコーナーをつくるわけですよ。いってみれば、まんが甲子園をライブにした感じかな?あとは、コスプレ大会を開いてみたらどうでしょうね。」
とアイデアをくださいました。
村上先生にとって2回目の来高。数十年ぶりに訪れた高知の印象は「大きなビルがずいぶん増えた」といいます。
「路面電車が走る町並みは、ちょっと懐かしく、開放感があって大好きです。高知ならではのひろめ市場もとても楽しい場所ですよね。せっかくなら漫画家大会議も、解放区的なものができればいいですね。一般の人が自然に参加できて、思い思いに楽しめるような…。飲酒はちょっと無理かもしれないけれど。」
と、漫画家大会議の今後のイメージを膨らませます。
皿鉢料理の由来もご存知です。
「女性も宴会に参加しやすいように考えられた料理だと聞きました。同士として酒を酌み交わすといったイメージでしょうか。高知には、たとえ男が出奔しても、しっかり家を護る女性がいるからこそ、坂本龍馬のような自由思想の人物が育ったのでしょう。土佐の女性の気風の良さはとても印象的ですし、土佐の精神風土には興味がありますね。」
と話します。
「ぽけまん」に込めた想い
漫画家の石川サブロウ氏が発起人となって漫画家仲間に提唱し、設立されたNPO法人国際まんが推進協会を母体に、2012(平成24)年10月に開設したWEBサイトで、単行本未収録の読み切り作品や絶版作品を無料公開しています。
「要するに、まんがが大好きな漫画家たちの創ったWEBサイト。それがぽけまんです。漫画家にとって、子どものようにかわいく大切な存在である作品たちを、もっと多くの人に読んでもらえないものか?そんな想いに同意し、石川氏を補佐する役割を私が担いました。今後は、親交のある若手漫画家等に、外部からの様々なまんがの仕事依頼を紹介することに力を入れていきたいと考えています。」
2017年11月、ぽけまんはNPO法人から株式会社に変わりました。これにより、漫画家への仕事依頼の自由度を広げていくことが出来ればと、村上先生は願っています。
全世界に発信していくスケール感
まんがの素材(テーマ)として、村上先生が今一番興味をもっていることが何なのか?非常に気になるところです。
「実は、次の作品への準備として、航空自衛隊のことと、幕末期の大阪のことを調べていますが、どちらも今までの私が知らなかったことだらけ。取材を進めるなかで、どんどん新しい知識を得られるので、非常に楽しいんですよ。
まんがには、表現手段として無限の可能性が秘められています。紙とインクとペンさえあれば誰でも描くことが出来る。それって、すごく魅力的なことだと思いませんか?自分自身が面白いと思うものを、常に全力で読者に伝えたい。そんな私のポリシーを形にするために、まんがというものは、大変すぐれた手段になってくれます。」
今、日本のまんが出版は難しい過渡期に来ています。村上先生は、厳しい眼差しで言葉を締めくくります。
「作家がネットを通じて、直接作品を発表出来る時代になっていることも事実です。今後は、日本だけでなく全世界に向けて発信してゆくスケール感を持って、まんがを描いていってほしいですね。」
今回のインタビューは、これから漫画家やまんが関係者を目指す若者にとって、道標となるメッセージをいただけた貴重な内容となりました。
村上もとか先生プロフィール
1972年週刊少年ジャンプに掲載された『燃えて走れ』で漫画家デビュー。
「六三四の剣」や「龍-RON-」「JIN-仁-」などの話題作を次々発表。
第15回手塚治虫文化賞マンガ大賞など、受賞歴は多数。
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