大沢俊太郎先生-インタビュー
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テレビドラマ化もされ人気を博したまんが「ゴタ消し-示談交渉人 白井虎次郎-」
などで知られる大沢俊太郎先生のインタビュー
漫画家になったきっかけから、テレビドラマ化もされた「ゴタ消し」誕生秘話・続編のお話や高知へ移住した理由などを語ってもらいました。
●まず、まんがを好きになったきっかけについて教えていただけますか?
僕は1才半の時から小学3年生まで、父の仕事の都合で西ドイツに住んでいたんです。その時、住んでいたお家の大家さんが日本の方だったんですが、その方のお子さんが日本の週間少年マガジンを買っていて、読み終わったものを譲ってくれていたんです。幼稚園児だった僕には少し難しい内容が多かったですが、それでもスポ根まんがや「あしたのジョー」なんかはとても面白く読ませていただいてました。中でも「デビルマン」や「マジンガーZ」などを描いていた永井豪先生のまんがが好きで、ドイツで過ごしたものの、日本にいる子どもと同じぐらい興味を持ってまんがを読んでいました。
●では、実際に漫画家になりたいと思ったのはいつ頃からなんでしょうか?
「なろうかな」っと思ったのは、中学2~3年生の頃です。でも実はそれまではプロのサッカー選手になりたかったんです。小学校3年生の時、西ドイツから帰ってきたんですが、その時、日本ではまだプロもなく、本場でサッカーをやっていた分、僕は結構上手い方だったんです(笑) だから自然とプロのサッカー選手になりたいと思っていたんです。でも、中学生ぐらいから能力的な限界が見えてしまって、それまでずっと好きだった小説かまんがを仕事にしたいと思い始めました。
そして、高校3年生の時には漫画家になることを決意し、独学で技術を習得していくようになりました。大学も漫画家として何か役に立つ所がいいと思い、文学部がある大学へと進学を決めました。
●2010年には代表作でもある「ゴタ消し」が「スーパージャンプ」で連載をスタートしましたが、それまでの契機を教えてください。
大学を卒業後、木多康昭先生の「泣くようぐいす」のアシスタントなどを行いながら、出版社への持ち込みを続けていました。その時に俳優が成り上がっていく話が認められ、連載の話が出てきたのですが「俳優の話はいつかネタが尽きるから、社会性があっていろんな話が作れるアイディアはないか?」と担当に提案されたんです。当時は弁護士ものやお医者さんものはあったんですが、弁護士がやってくれないようなグレーの部分は結構手つかずになっていました。そこで僕の方から「裏社会の弁護士はどうでしょう?」と提案させてもらうと、担当さんからも承諾が出て。これが「ゴタ消し」連載への始まりとなりました。
●「裏社会の弁護士」という設定はどのように閃いたんですか?
あの時はひたすら本屋に行ったり、図書館に通ったりして、とりあえず目についたものを片っ端から借りて読みあさっていました。その時に歌舞伎町で起こる様々なトラブルを実録した「歌舞伎町アンダーグラウンド」という本に巡り会ったんです。その作者が、「揉め事」と言う言葉に「ゴタ」というルビを振っていて、それが凄く面白いな。と思ったんです。そこからゴタを消す人「ゴタ消し」というタイトルが先に決まりました。そして、このタイトルだったら普通の弁護士ではなく、ちょっと違法なこともする、だけど探偵でもない「裏社会の弁護士」という設定に繋がっていきました。
●「ゴタ消し」のキャラクターはどのように作り出されたんですか?
特徴が強くないと、読者に覚えてもらえない。というのが大前提にあります。ただ、今までもある様な、分かりやすく正義感に溢れているまっすぐな人間を描いても、他のベテラン達を押しのけるのは難しい。また、読者は目新しいものを探している方が多いので、ジャンルにしても、主人公像にしてもありふれたものにはなるだけ手を付けたくなかったんです。そこで、あまり世間に出ていなくて、でもカッコイイというのはどういうものなのか? と、考えていました。世にでているまんがのほとんどの主人公は喧嘩が強いのですが、このまんがの主人公はすごく弱いんです。ただ、現実世界ではほとんどの人が喧嘩なんてしたことがなく、喧嘩も弱いですよね。でも、喧嘩は苦手だけど正義感が強い人は沢山いるんです。だから、そういう人はどう揉め事を解決していくのか。というのを考えて出てきたのが「ゴタ消し」の主人公となった「示談交渉人 白井虎次郎」だったんです。
●ビジュアルとバックグラウンドとではどちらから決めていくんですか?
「ゴタ消し」の場合はまずは性格から決めました。ちなみに主人公「白井虎次郎」は、はじめ黒髪だったんです。ただ、「目立たないね」ということで、担当は「金髪にでもしたら?」って言ってたんですけど(笑) でも、髪を染めるにしてもその人なりの理由があるんですよね。しかも染めるとなると男性の場合、ちょっとチャラい感じもあって。なりたくてなったんじゃなくて、なってしまった白髪というのが僕のイメージする「白井虎次郎」だったんです。
●「DIVER」についてもお伺いしたいんですが、まんがを読んでいて感情の描写としてすごく目が印象的でした。これは何かを意識して描かれているんでしょうか?
元々、表情を描くのが好きなんです。でも「ゴタ消し」の時にはそれをやりきれなかったので「DIVER」では、もうちょっと思い切ってやろうと思って描いていました。また、「ハラハラ、ドキドキ」をコンセプトにしていた分、目だけでなく口や手のアップというのは緊迫感を出すのに非常に効果的なので多用していました。
●多くの大沢さんファンが両作の続編を期待していると思うのですが、今後続編を出す予定はあるんでしょうか?
「ゴタ消し」については予定をしています。多分書き下ろして、まずは電子書籍を出して、付き合いのある出版社になんとか来年中には書籍化してもらいたいと思っています。実際に今、続編の1話目を描いているところです。
「DIVER」についても、メールやコメントで「続きを見たい」というメッセージを頂いているので、いつかはみなさんの声に応えられたらと思っています。
©大沢俊太郎/集英社
●高知への移住のきっかけを教えていただきたいのですが。
中学2年生の時に「竜馬がゆく」を読んで、龍馬が好きになり、高知が好きになりました。また運良く高知出身の女性と結婚することにもなり、最終的にまんがも紙からデジタルの手法に変えることで、東京でなくても仕事ができるようになったので、大好きな高知への移住を決めました。
●高知への移住をきっかけに、まんがの書き方を紙からデジタルに移行されたと伺ったのですが、実際手法を変えられてのメリットやデメリットはありますか?
メリットの方が断然多かったです。消しゴムのカスもでないですし、インクの滲みもない、さらに拡大ができたり、修正も簡単にできます。ただデジタルにした場合、絵を描く際にまったく摩擦が無くなるので、それに慣れるまでには苦労しました。ただこれも、紙に描いてる場合、摩擦によって紙を削ってしまうことが慣れてきてもよくあるんですが、このミスも無くなりました。だから僕はデジタルにして9割がメリットに感じています。
だけど、生原稿が無くなるので、芸術性は多分無くなってしまうんじゃないかな。と思っています。僕の場合、キャプテン翼のアシスタントに入らせていただいたことがあるんですが、「キャプテン翼」は小学校4年生ごろから読んでいる僕にとっては伝説のまんがで、そこにアシスタントに入れるとなって、先生から原稿を渡された時の感動みたいなものはデジタルになるとどうしても失われてしまうんです。
●最後に、読者へのメッセージをお願いします。
まんがも小説もそうですが、自分の言いたいことを形にできるものなので、何かを作るということはすごく面白いことです。その面白い作業をさらに評価してもらえたりするので、すごくやりがいのある職業だと思っています。だから創作全般は仕事でも趣味でもすごく楽しいと思うので、これからももっと多くの皆さんに興味を持ってもらえれば嬉しいです。
プロフィール
広島県出身、2013年に家族で高知県に移住。
2003年にマガジンFRESHにて「ホラーテイル」でデビュー。2010年には集英社の青年誌「スーパージャンプ」(休刊)にて「ゴタ消し-示談交渉人 白井虎次郎-」の連載がスタートし、2011年にはドラマ化され人気を博した。現在、最新刊となる「DIVER- 組対潜入班-」好評発売中。
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