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『黄昏流星群』と『ヘルプマン!!』──作品の方向性は異なるものの、両作とも高齢者をモチーフに描いており、読者の心を揺さぶります。はたして、この2作品を描いた漫画家はどんなことを考え、こういった作品と取り組んできたのでしょうか? 創作のきっかけから取材の仕方、はては高齢化社会に対して思うことなどを伺いました。
女は死ぬまで女 途中で別な生物に変わるわけではない
──お二人とも高齢者を主軸においた作品を発表されています。描こうと思われたきっかけは何だったのでしょうか?
弘兼憲史(以下、弘兼): 『黄昏流星群』はちょっとエッチな中高年の話です。ぼく自身、そういうテーマが好きで描いてみたいと思ったことが一番大きいですね。
中高年の恋愛は、小説や映画ではよくモチーフにされるのですが、漫画ではなかなかなかった。たとえば永井荷風さんや谷崎潤一郎さんは中高年のかなりきわどい恋愛ものを描いています。でも、漫画の世界では、そういった作品がなかった。おそらく中高年のラブストーリーを、濡れ場も交えて本格的に描いたのはぼくが初めてなんじゃないかな。くさか(里樹)先生はその意味では、高齢者の介護問題という、かなり重いテーマに正面から取り組んでいますよね。
くさか里樹(以下、くさか) :実は、まったく重いテーマや介護の漫画を描いているつもりはなくて。以前、自分の作品に自信が持てなくて、すごく凹んだことがあり、漫画家を辞めようとさえ思ったことがあります。そのとき「他人と自分とを比べる人生は惨めである」という言葉と出会いまして。当たり前のことですけど、誰かの評価を気にしている状態って惨めですよね。
それ以来、自分はどう思われてもいいから好きなように描こうと決めて。ありのまま、未熟なままでいいんだって開き直れてからは、すごく仕事が楽しくなりました。普通の人の生活や、身の回り1キロ四方の話をモチーフに作品を描いています。
弘兼: (『ヘルプマン!!』は)「週刊朝日」(朝日新聞出版)で拝見したのですが、編集部から依頼があったのですか?
くさか: 2003年に「イブニング」(講談社)で始めたのが最初です。担当編集者とはそのときからの付き合いになりますけど、2014年12月に「週刊朝日」に拾ってもらって、『ヘルプマン!!』と“!”を一つ増やして現在でも連載させてもらっています。
くさか: 『黄昏流星群』は、それまであまり人が着目していなかった中高年の恋愛をテーマにしています。
弘兼: まあ、(漫画家は)だいたいニッチなところを狙いますからね(笑)。一応、大人向けの作品なので、濡れ場みたいなところを描かないといけないのですが、60~70歳の男女のベッドシーンはすごく描きにくい。
くさか: どうしてですか?
弘兼: まず60代、70代の女性の裸を見る機会があまりない。この作品では、女性の脂肪のたるみが肝だと思っているので、ものすごくリアルに描いています。でも、あまりシミなんかを描き込んでしまうと逆に見たくなくなってしまうので、いかに綺麗にというか、魅力的に描くかは苦労しています。
フェチ雑誌というか、その年代の女性に特化した雑誌や野村沙知代さんの写真集なんかは、資料として参考になりますね。
くさか: 『ヘルプマン!!』でも性の問題は扱っていますが、いくつからそういう性のことを言っちゃいけないのかなと思っていて。20歳から1年ずつ年をとっていって、ただ70歳、80歳になっただけで、今日も明日も、来年も私は全然変わらないと思うわけです。どの時点から恋愛のことを考えるのが変と思われるのか? ずーっと地続きのハズなんですよね。
弘兼: 全然地続きですよ。有名な話で、大岡越前がお白洲で年増の女が若い男をそそのかしたという話があります。そのとき大岡越前は「そんなことはない」と思い、母親に「女はいつまで欲情するものか?」と聞いたそうです。そしたら母親は、おもむろに火鉢のなかの灰を掻き混ぜた、というエピソードがあります。灰になるまでというメタファーなんですけどね。
くさか: どこかで別な生き物に生まれ変わるわけではないので、女は死ぬまで女なんですよね。
弘兼: 気持ちの部分では、ぼくはいまだに中二くらいでいます(笑)。老人ホームなどでは、三角関係でドロドロしているという話を聞いたことがあります。
くさか: すごくナチュラルに、楽しい介護を行っている施設で一番起きる出来事が嫉妬なんです。逆に、恋のことが問題になるような施設は良い施設なんです。
弘兼: 若い時分は、特に女性は遠慮があると思うのですが、年をとって多少耄碌してくると、その遠慮が外れて本当に自由に発言するようになる。ピュアな恋というか、結構真剣な恋になります。必死な恋といってもいいかもしれない。
くさか: 遺産相続の問題は大変ですけど、結局妊娠の心配もないですし、夫に先立たれて独身に戻っている方も多いのでフリーな恋愛を楽しめる、もっとも自由な時間なのかもしれません。
表現方法の違いにみる二人の漫画家の矜持
──話は変わりますが、作品を制作していくうえで何か心がけていることはありますか?
弘兼: 『黄昏流星群』であれば、あまり直接的に濡れ場を描くと、かえって興醒めするというか、エロティックに伝わらないことがあります。たとえば「煮星メンのかほり」で、かつて下宿していた男性が数十年ぶりに再会した女性と行為に及ぶ場面などは、「恥ずかしい」と言う女性に「じゃ電気消すから」と言って暗闇にして、女性が果てる瞬間を流れ星が流れるというメタファーで表現しました。この場面は自分で描いていてもエロティシズムを感じましたね。
くさか: 漫画って絵だけではなく文字で読む要素もあるので、なるべくセリフで補わない、できるだけセリフを削るようにしています。そうすると、セリフで伝えなくても伝わるような表現、シルエットだったり、一コマだけど読者に何かを感じてもらえるような見せ方、そういったものを常に考えています。
弘兼: ページ数に余裕があれば、セリフ無しで目の動きだけで、4コマくらい使えたりもするのですが、「モーニング」(講談社)だと16ページくらいしかないので、ぼくの場合は用語説明のキャプションを入れてしまうこともあります。本当は、映画のクローズアップと同じで、目の動きだけで何か表現できたらと思うんです。でも、ページ数に限りがあったり、専門的な内容を扱うときは言葉足らずになってしまう。
結果として読者を誤解させてしまって、「あれはないだろう」と言われてしまうこともしばしばで。こちらとしては「もちろん分かってますけど、それは描けないから描いていないだけです」ということがすごくあります。
くさか: 弘兼先生の対談記事で、取材をして100の情報を得たとしても描けるのは1か2くらいしかない、というのを読んだことがあります。
弘兼: そうですね。もっとも100の情報を得ていたら、20ぐらいは出していますけど。特に政治を扱った『加治隆介の議』を描いているときは、霞ヶ関や国会で、本職の議員に何度か直接会って話を聞いて描いていたので、これはオフレコだからという話がたくさんありました。毎回ネームの段階で一度見てもらうんのですが、8割くらいは描けないことで。
くさか: 『ヘルプマン!!』はよく読むと、意外と介護のことは描いていないんです。カチンときたり、悔しがったり、誰もが持っている感情を介護の場面にあてはめているだけで。ただ嘘は描けないので法律関係の部分に関しては取材したり、新しいサービスや動きが耳に入ると実際に訪ねていったり、そういう勉強は欠かしていません。
──お二人の作品にはスーパーマン的な、世の中にいないような人物が登場しないのも特色のような気がします。
弘兼: ぼくは実際に、日常生活のなかに存在しているような人物を描くのが好きですね。リアリズムが好きなので、「これはありえないな」と思ったことはほとんど描いていないと思います。ただ島耕作のようにモテる奴はいないと思いますが……。彼はちょっとありえないかもしれないけれど、あとはだいたい「こういうことって、あるよね」で構成していると思います。会社の重役たちの話し合いや政治家たちのやりとり。幸いにしてぼくはこういう立場なので、名だたる社長さんや総理大臣とお酒を飲む機会があります。「日本を動かすトップの人たちは、意外とこうなんだ」というのが分かるので、そういう部分がぼくの漫画のリアルさにつながっていると思っています。
くさか: リアリズムが好きな弘兼先生と同様、私も超人的なスーパーヒーローには興味がなくて。『ヘルプマン!!』で主人公を介護の世界からもっとも遠い存在にしたのは、介護することが、とにかく暗い、悲しい、辛いって変に伝わっていると思ったからなんです。女性の仕事であるとか、高齢者という特殊な生き物が、社会の枠組みから一歩外れて存在している──そういう介護の世界への印象がすごく嫌で、主人公の恩田百太郎や同級生で親友の神崎仁を設定しました。弘兼先生の作品ではよく「この人物、実際にどこかにいるんじゃない?」と感じることがありますが、モデルになっている人物がいたりしますか?
弘兼: 『島耕作』シリーズは、いろいろな人物をモデルにしています。だいたい身の回りの編集者だったり、知り合いの友達であることが多いのですが、俳優さんや女優さんをモデルにして描くこともあります。『課長島耕作』の銀座編でのりこママが登場しますが、あのモデルになった人物は実際に銀座にいたママです。性格だけじゃなく顔も似せて描いていたから、ついにバレて「あなた、私のこと描いているでしょう」って言われて「すみませんでした」と謝ったこともあります。
──弘兼先生の作品のなかには原作者と組んで描かれた作品もあります。
弘兼: 原作のある作品は、オリジナルに比べると物語の根本ができているので、ある意味楽なんです。でも、原作者の原稿以上のものを作ろうと思って取り組んでいました。もちろん、小池一夫先生のような大御所の原作者の場合は、表現を変えてしまうとマネージャーが飛んでくるので、そんなことはしませんが……。そうでない限りは、原作を読んだうえで、自分のイメージを作り上げて「どうだ」という感じで描いていました。そういった意味で矢島正雄先生と組ませていただいた『人間交差点』は、毎回勝負だと思っていました。
オリジナルの方は、いわば自分が映画監督なんです。自分でシナリオを描いて、キャラクターに表情をつけるのは演技指導、スクリーントーンやベタは照明のようなもので。ほぼ映画監督と同じ仕事をするわけですが、音楽の部分だけは映画とは異なりますね。もっとも、これから電子書籍が一般的になって、効果音やBGMが普通に流れるようになれば、漫画の描き方も大分変ってくるかもしれません。スクロールがコマ割りを代用して、吹き出し内のセリフも読み上げるようになると、漫画の描き方自体が変わってくると思います。
──くさか先生の作品では意図的に背景が描かれていないこともあります。
くさか: 日本漫画家協会賞大賞をいただいたときは、やなせ(たかし)先生から「背景のない漫画です」と紹介されて(笑)。怒られるかもしれませんが、背景を描くことで画面に圧迫感ができるというか。あえて背景を描かないことで、描いている部分が活きてくることもありますし……。
弘兼: コマを斜めにしたり、(背景を)デザイン的にカットしたり、見せ方を工夫していますよね。
くさか: 弘兼先生の作品では『黄昏流星群』をはじめ、ほぼきっちり(背景が)入っています。
弘兼: ある種、病気に近いですね。白いところがあると、白恐怖症になって「ここも(背景を)入れよう」という感じで。ぼくの場合、背景は写真をトレースして入れています。もちろん雑誌から取ると著作権に触れてしまうので、きちんと自分たちで写真を撮って。今回、高知に来ていますが、はりまや橋や帯屋町のアーケードなどを撮影して帰ります。写真をPCに取り込んだ後、それを紙焼きにして、コマに合わせて拡大、縮小し、その後、トレースしているのでリアルな背景が入るんです。その分、時間はかかりますが……。いまアシスタントだけで10人養っています。
くさか: それはもうチームですね、弘兼組みたいな。
弘兼: くさか先生は、アシスタントは何人くらいで回しているんですか?
くさか: いまは1人です。それというのも「週刊朝日」で描くようになったときに、デジタルに移行したので。それまではアナログだったので4人いましたが……。主線を手描きして、そのあとはPCに取り込んで、スクリーントーン等の処理を行っています。
弘兼: そうですよね。いまはそういう時代なんですけど、ぼくはそういうのが嫌なので、基本的にはアナログで、いまだにスクリーントーンも手貼りで行っています。
明るく楽しい高齢化社会にしていくために
──取材を行っていくなかで、印象に残っていることはありますか?
弘兼: 数年前に中国に写真を撮りに、アシスタント5人くらいと一緒に行ったんです。あまりに広大なので、5人を5方向に分けて、写真を撮りながら行けるところまで行って、12時くらいにいったん集合、その後また別な方向に、という方法で写真を撮りまくったんです。でも、いまとなっては全然使えません。新しいビルがどんどん増えて、向こうの1年が、日本の7年分くらいの変化になっているからです。
くさか: 10年以上介護をテーマに漫画を連載していますが、介護に対するネガティブな印象は根強いと感じています。
私が取材を通して見てきた介護は全然違っていて、楽しいことや、なるほどと思うことが多いんです。「愉快」と「介護」の造語として「愉快護」情報局という活動をはじめたのも、介護へのイメージを少しでも明るいものへと変えようと思ったのが、きっかけですね。
──最後に「高知家の未来を漫画で語れ」という本対談のテーマについてもお伺いします。
弘兼: 今後さらに医学が発達すれば、もっと長生きするようになると思うんです。ぼくももうすぐ69歳になるんですけど、若いときに69歳の自分を想像したら、こんな69歳では絶対なかった。杖をついて、縁側で羊羹をつまみながら渋茶を飲んで、うぐいすの鳴き声を聞いて「おお、今年もよう鳴くのう」みたいな。少なくとも老人言葉を使うと思っていたのですが、全然違って、いまだに中二病を引っ張っていますからね(笑)。
くさか: 高齢化大国と言われるスウェーデンでは認知症は重度化していないんです。日本では徘徊や弄便、暴力、暴言が認知症と思われていますけど、正確にはこれらは認知症の症状ではありません。高齢になってもの忘れや判断がつかないことを責められたり、理解されなかったりして、本人も分からなくて不安で困っていることが周りから理解されない。逆にそういうことが理解されていれば、(認知症は)重度化しないんです。高齢者にとって楽しめる状況、周りが優しく受け入れてくれる状況が生まれれば、社会の色も変わってくると思うんです。
弘兼: いま第二の人生を考えて、田舎に引っ越したり、地方に行く方がたくさんいます。地方創生でどこの県も呼び込みがとても盛んですが、四万十川や仁淀川など(高知県には)いろいろ良いところがあるので、そういったところを発信することも必要だと思います。
くさか: そうですね、高知県は発信下手とずっと前から言われています。そして高齢化率は全国3位で、だいたい全国平均の10年先を行っている、高齢化先進県だったりします。
弘兼: 高齢化先進県ということは長生きする方が多いか、あるいは若い世代が、どんどん外に出ていくかですが……。
くさか: まさに両方ですね。でも、日本は最速で高齢化していますが、世界に目を向けると元気なお年寄りが多い割合も世界一なんです。高齢の方でも元気な方が多い。
弘兼: これからは高齢化を逆手にとることも重要だと思います。たとえば山間部に住んでいる高齢の方にとって、日常の生活物資は購入しづらいと思うんです。昔は軽トラックでスーパーと自宅を往復できていたのが、車に乗れなくなる。その人のために特別に宅配トラックを手配するとコスト高で回らなくなる。そこでドローンを用いる。
いまドローンは20kgまで運べるようなので、段ボールに生活物資を入れて運ぶ。どうしても落下のリスクがあるので、河川や畑の上をドローンの通り道にするといった工夫が必要かもしれませんが……。
くさか: まさにそうですね。お聞きしていて、遊び心のある知恵が必要な時代なんだ、と思いました。介護の取材をしていても、どうやって面白い発想で楽しませるか? が重要だとよく感じます。
たとえば(『ヘルプマン!』)第1巻で、入浴を拒否するおばあさんをどうやってお風呂に入れるのか、を描いたのですが、無理やり入れようとすると、おばあさんもその介護を行っている人も傷つく。でも、こっそり頭にシャンプーを付けて、ちょっと泡立てて鏡を見せ「あれ? お風呂に入ってたんじゃないの?」と言ったら、「たいへん」と言って、慌てて自分でさっさとお風呂に入ったという例があります。
そういう知恵やアイデア、ユーモアに基づく発想がすごく大切な時代になっていると思います。何より、それがいまの社会を明るくすると思うんです。マイナスに捉えがちな山間部の状況もドローンを用いて新たなビジネスチャンスを生む、これからは今までに全くなかったような発想でモノを生み出していかないといけない時代で、それは本当におもしろい時代だと私は思います。
弘兼: 今はチャンスなんだと思いますね。日本は世界に先駆けて高齢化社会じゃないですか。いま一人っ子政策を行っている中国は、10年後、必ずものすごい高齢化社会になります。アメリカも10年後ぐらいには高齢化社会が来ると言われているので、今のうちに機能的な介護グッズや道具を開発して特許をとっておけば、将来的にビジネスチャンスが生まれると思います。
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