第24回まんが甲子園予選審査会 審査員の先生方の講評

ホーム > 王国の賢人 > まんが甲子園予選審査会 審査員の先生方の講評 > 第24回まんが甲子園予選審査会 審査員の先生方の講評

更新日 : 2015/06/24

 6月17日に行われた予選審査会の際の、審査員の先生方の講評をご紹介します。

牧野圭一先生


牧野圭一先生

 24回を迎えた本大会は、応募する高校生のみなさんの、表現力の充実ぶりを証明するような、力強い作品が並びました。それは同時に、選考会場が厳しい競争の“場”になることを意味します。
 『ありのままで』の課題には予想通り“蟻”が数多く登場し『アリのままでいいんだ!』と満足するアリ達の姿が描かれました。ここでは競争者の作品を想定し、その段階から一歩も二歩も踏み出して、選考委員をうならせるレベルに達するまで考え抜くことが期待されるのです。
 土佐高校のメンバーは、この流れを読み込んだように、物語り=『ツルの恩返し』を逆手に取って、見事なアイデアの作品に仕上げました。全作品を通しても一、二を競う評価を得たのです。


 

 蟻をストレートに登場させた作品群の代表は、東京学芸大学附属国際中等教育学校。シンデレラに重ねたアイデアが光っていました。総体に、アイデアと絵のバランスが、心地よいハーモニーとなって“昇華”をはたした作品が高い評価を受けて予選を通過することとなりました。
 犬を扱って「ハラスメント」の課題をクリアしたのが多摩大学附属聖ヶ丘高校。かわいらしい服を着せられた大型犬がクツジョクに顔をゆがめながら歩いている姿。一方ゴミ箱をあさりながら、良家で飼われているプードルをウラヤマシガラセているノラ君の姿。作者は“犬のありのまま?”を描いて、生き生きした画面を演出。
 両作品とも、絵とアイデアの調和が見事です。マンガは他の絵画表現と異なり、どのような条件のシチュエーションでも描き切ることが可能です。今回も、その深い領域に達した作品が数多く見られ、選者は、選びながら、その自由な表現世界を満喫させていただきました。


くさか里樹先生


くさか里樹先生

 ガチンコ・ネタ被り対決!! ここまで同じアイディアが並ぶと「もっとひねりなさい」という気持ちは失せて、「みんな、何て素直なんだろう」と心が洗われるようでした。そのとおり、嫌な気分になる作品が無かった。それはとても大切なことです。そのかわりズバ抜けた作品にはなりません。
しかし、読者を楽しませるという目的は充分に達成することができます。とても楽しく読ませていただきましたよ。


 さて、誰とも被らないアイディアを生もうと思うときは、自分が思いつくアイディアは捨てることです。自分が思いついたものとは真逆の設定にする、真逆の小道具を使う、など、自分を裏切ってみるといいです。例えば、「調理してないありのままの食材を皿に盛る」アイディアを思いついたなら逆に「調理しまくった食材が畑に生えてる」とか。例えば、「ありのままの人間の姿」を思いついたら「人間以外のあらゆるもののありのままの姿」を追求してみるとか。

 漫画のアイディアは無限に転がっているのです!!



Moo.念平先生


Moo.念平先生

  「べたべたさわられるのはもうごめんにゃー!!」


 ―ずっと頭から離れない、今回イチバン面白かったセリフ。本選通過作品の1コマ目の第一声なんですが、これが思い出すたびに笑えます。愛玩動物である“ネコ”の悲痛な叫びが、可愛らしく見易い絵とマッチして“パワイイ絵(パワフルでカワイイという意味の、オレが作った言葉だっ!)”になってます♬


 漫画に絵が重要なのは当り前ですが、絵の魅力を倍増させるセリフの重要さを改めて思い知らされました。この作品、全てのセリフに笑わされてしまった♬ ムダをそぎ落とし、シェイプアップされた言葉は何度でも楽しめるのだ。一方、選にはもれたが一面文字だらけの作品もあり、実はこちらも面白かった♬ 字が多いと読むのに時間がかかり、焦点もボヤケるので、作品としては損なんですが、長時間かけて読んでいる間中笑ってしまっていた。つまり、そのセリフに、明確な“ねらい”があるかどうかが重要なのです。


 

 また、セリフだけ読んで理解できるようなものも漫画とは言えない。生きた、魅力的な、そしていつまでも笑えるような(←私の個人的な希望)セリフを考えよう♬ 私がこの世でイチバン好きな漫画のセリフは、『マジンガーZ』の主人公・兜甲児が言った―「動く動く!マジンガーの手がオレの手のように!!」だ!!!


 絵についても少し。選外作品ですが、“鶏のからあげ”が超ウマソーに描けていた♡ 茶色いかたまりを中途ハンパに描くと“ウ○コ”に見えかねないけど、ちゃんと実物を見て香りや肉汁、食感まで伝わる程に仕上げてくれた。腹へったぜ!
もう1つ。

 選外で、女の子3人がプリクラで目が大っきくなり、ほとんど別人~という作品。このネタならもう一歩進めて、「3人のうち2人は目パッチリで可愛くなったが、もともと目パッチリの子だけ、有り得ない程の巨大な目になっちゃってコワ~イ」なんて展開でも良かった。ギラギンドのような目にすれば面白かったと思うヨ♬(←「ギラギンド」とは昭和の特撮ヒーロー番組『スペクトルマン』に登場した怪獣だ。ネットで画像検索せよ!)


 もう1歩、もう半歩先を考えるだけで、もっと面白い作品に進化します。高校生諸君、もっとジャンプしやがれっ!!


ひのもとめぐる先生


ひのもとめぐる先生

 

 まさに「ハラスメント(嫌がらせ)」な今年の予選テーマに350を超える応募があり驚いています。私が現役の頃これだったら軽く絶望していました。みんなスゴイ。尊敬。


 まず学生という限られた世界にみんなはいて、正しさ、間違い、暗い、明るい、強い、弱い…「対人関係」の色んな物を象徴したテーマで、かなり頭を悩ませる、熟考なしには完成しないものだったと思います。しかし、さすがまんが甲子園!スゴイ作品は必ずやってくる!

 こういう難しいテーマの時には作り方…もとい、伝え方に気をつけなければいけません。
 どんな人に?どんな時に?どんなことを?どのくらい?
 それらの前提条件を決め、ネタを作ったあとに、その条件をいかに画面の中(絵とセリフ)で見せていくか、そこが勝敗の分かれ目です。


 

 落ちてしまった作品のほとんどが、それらの伝達不足や、他の解釈の余地を見せてしまっているものばかり。
 前提条件、本題のネタ、そして見事なオチ、これらが絶妙にテーマとからみながら、わかりやすく成立させてある作品が選ばれた、熟考された30作品です。
 …そうじゃなさそうなモノもある?
 まあ、そこは、まんが甲子園なので…。
 8月本選大会、楽しみです!


さかもと清敏先生


さかもと清敏先生

 「第24回まんが甲子園」も応募点数が12年ぶりに350校を超え、357校が全国から集結、そのうち初応募は57校。審査する者としては大変嬉しい限りです。
 審査会場に入るとペン児たちの熱気と、気迫が作品から発せられ全身にびんびんと伝わり緊張感で冷たい汗が背中を流れはじめた。

 

 テーマ「ありのままで」は応募総数が過半数を占めていた。このテーマを選んだチームは、文字どおり、「そのまんま」を書いたらいいようなものだが簡単なようで実に難しい。さすがネリに練を重ね飾り過ぎずに、ポイントを絞って表現した作品がそろい審査員が足を止めて、唸る場面がしばしばあった。
 

 テーマ「ハラスメント」は頭に○○と付いた様々なハラスメントを近年耳にすることが多くなったがそれを踏まえてまんが的な切り口で迫り、こんなハラスメントまで将来起こるのかと、想像以上に面白い作品もいくつかあった。


 

 総合的にどの作品も年々進化して、ネタの考案、構図、配色もよく、社会現象をよく風刺した優秀なものが多くなった。激戦の結果、本選出場となった30校は、ますます洗練された面白い作品を楽しみにしています。
 惜しくも僅かの差で今回出場を逃したチームも、諦めずに来年もリベンジして、夏のまんが甲子園会場でお会いしましょう。


岩神よしひろ先生


岩神よしひろ先生

 

 「ありのままで」202校「ハラスメント」155校合計357校とすごくタクサンの作品で審査は大変でしたが、絵もうまいし、バラエティーにとんだ作品ばかりで楽しい審査でもありました。惜しむらくはネタがかなりかぶっていた所ですネ。
 特に「ありのままで」では蟻が蟻のままや、蟻のお母さんや、スナックのママというネタが結構被っていましたし、食材そのままの料理のネタも多かったです。
 これはすごく良いネタだと思っても少し時間を置いて、もう一度考え直し、さらにひとひねりさせるとネタかぶりも少なくなると思うし、もっともっとおもしろい作品になるのではないかと思います。


 惜しくも本選出場できなかったペン児のみなさん、ネタのツメに時間をかけてください。そして、本選出場のペン児のみなさん、すごい作品を期待してます。



本選出場校の発表&各作品への講評の様子は、動画でも配信中です!

▲ページのトップへ