第33回まんが甲子園予選審査会 審査員の先生方の講評

2024/07/02
令和6年6月14日(金)に行われた予選審査会での審査員の先生方の講評をご紹介します。

 

山根青鬼 先生

 毎年の事だが、むつかしいテーマに高校生諸君は素晴らしいアイデアの作品を描いてくれる事はとても嬉しく、審査員としては選びがいがあると共に、逆に勉強させてもらっている。
 今回のテーマ「サブスク」は私も初耳で、つい審査の仲間に聞いてしまった。
 しかし、高校生諸君は、それを面白くまとめてくれた。将来が楽しみだ。
 

くさか里樹 先生

 読み手を笑わせようという気持ちが伝わる楽しい作品が多くて、今年の高校生はすごいぞ!と、ワクワクしました。反面、爆笑にまで至っていない、とか、そうきたか!とびっくりする作品がほとんど無かったのは残念でした。
 つまり、あとひと工夫でものすごい作品になるということです。昔話やオノマトペを題材にしたいわゆる“ネタ被り”が多かったのですが、その中で勝ち残るためには、あと一歩、もう一歩、おもしろさを追求する執念が欠かせません。ほんとはそこからが創作の一番面白いところなんですよね。
 ともあれみんな力があるのは証明されました。
 通過校も落選校も自信を持って、漫画を楽しんで下さいね!
 

Moo.念平 先生 

 
 昨年に輪をかけて、描き過ぎ(つめこみ過ぎ、コマ割り過ぎ、パソコン使い過ぎ)による“重い画面”の作品が多く、とても勿体無く感じました。前回(第32回大会)の講評を今一度読んで頂きたい!
 手を入れるほど作品の質が上がるワケでは決してない。“完成”とは、やり尽くす事ではなく、最良のところで止(と)める事であり、その見極めが作品の出来を左右するのです。
 児童漫画家である私は、子供向けの少ないページ数の中で最大の面白さを追求する毎日ですが、これが俳句や短歌づくりにとてもよく似ているのです。…言わなくても分かる事は言わない、1語に2つの意味を持たせる、順番を変える、1字でも短い語を厳選する…といった徹底的な“引き算”の中で、おのずと最も重要なものが際立ってくる。最高のアクションだったり、たった1つのセリフだったり、全てを包みこむ表情だったり…。これを大きく打ち出した作品こそが人の心を動かすのだ!
 限られた紙面だからこそ、出来るだけ大きな絵作りをしてほしい。描きたいコマ漫画・ページ漫画は別の機会にやる事にして、年イチの『まんが甲子園』では、でっかい会場で、でっかいボードにデッカイまんがを描こうじゃねえかっ!当日『かるぽーと』に足を運んでくれた小っちゃい子供からお年寄りまで、ネットで観てくれてる日本中…いや世界中の人たち、ついでに遠い宇宙から覗き見してる異星人の皆さんまでも楽しませてやろうぜ!!
 過去のデータなど気にするな!歴代優勝作品などほっておけ!!今年は君たちが心底愉(たの)しんで描いた作品が優勝するのだ!!!夏の高知の開放的な空気が、それを後押ししてくれるだろう♫
 最後になりましたが、あの『カレーづくし』は上手かったし美味かった!“漫画”が苦手としている「音」「熱」「香り」全てが感じられました♫今回の私のNo.1作品です。
 

ひのもとめぐる 先生

 みなさん、たくさんの応募、ありがとうございました。
 工夫を凝らしたたくさんの作品を前に、目がへとへとです。
 今回は(も?)テーマが難しく、要素が過多になった作品がありました。「前提」を説明して、「展開」し、「結果」を示す。このバランスが読みづらい作品がたくさんになってしまいました。
 これは一般のストーリー漫画でもよく言われるんですが、本当に描きたいことのためにそれが必要なのか?をじっくり考えてみてほしいです。
 設定に凝りたければ、その設定に対しての最高の行動やセリフ、ラスト(オチ)がつけられているか?逆にオチがキモであれば、設定は適切に表現できているか?
 そんなことをしっかり考えてみてください。
 意外と「この1コマだけでも作品になり得たのでは?」という作品や、「違う設定でも同じオチになるので、設定が弱いのでは?」という作品が多かったです。コマの大小をつける、セリフをまとめる、構図を変える、色を分ける、ちょっとの工夫で変わります。
 今回残った33校の作品は、そこを巧みに操り、審査員の心を動かした作品です!
 くだらない1発ネタから、考えさせるネタまで、様々です。どのようなテーマも、モチーフも、1枚(もっというと1コマ)でも表現できるのがまんがです!
 本選出場のみなさんおめでとう。高知で待ってます。
 そして選ばれなかったみなさんもありがとうございました。これに凝りずたくさん描いてほしいです。どれもよく描けていました。
 今年からレギュラー審査員に卒業ペン児のえすと先生がジョインしてくださりました。このユーモアの頭脳戦をしっかり楽しみましょう!
 

えすとえむ 先生

 初めて参加させていただいた予選審査会、まず集まった作品の熱量に圧倒されました。一つ一つの作品の放つエネルギーに向き合い審査終了後はぐったりしてしまうほど。
 発案から仕上げまで、自分たちには作品を完成させる力があるということを全ての参加校の皆さんは誇ってください。
 その中で本選出場33校を選出させてもらったわけですが、中でも突出した作品、競った末に本選へ進んだ作品と評価に差はあります。まずは一目でわかりやすいもの、特に『脱出』のテーマでは数コマを使って暗闇から何が脱出したか、というオチを描く定番パターンの中で「何が脱出したのか」「脱出によるリアクション」が上手く描けていた作品が高い評価を受けています。一方『サブスク』ではテーマをうまく消化しきれていない作品も多かったように思います。「どんなサブスクがあったら面白いか」がテーマとなるのはもちろんなのですが、サブスクの説明にとどまってしまいリアクションの面白さまで描けた作品は少なかったという印象を受けました。本選出場となった作品たちは発想を作品に昇華できていることで評価を集めたものが中心となっています。
 脱出、サブスク共に同様のアイデアの作品も多くありました。そのこと自体は自然で回避は難しいことですが、アイデアをより面白くインパクトのある画面にできるかが作品としての魅力を分けることは留意してください。
 作画に関しては、力のこもったものが多い反面描き込みすぎて見辛くなってしまったものも多く、より「伝える」には引き算も必要であることを意識してもらえればと思いました。まんが甲子園における1コマ、1ページ漫画は絵が魅力的であることも重要ですがそれだけでは勝ち上がれない難しさがあります。本選出場校にはより発想力、表現力をより鍛えることを期待します。作品作りには時には一度決まったものをひっくり返す勇気も必要です。話し合い、とことん悩み、5人の頭をフル回転させてチームでしか作れない作品を作りあげてください。
 次は本選で作品を拝見できるのを楽しみにしています。
 

ちさと 先生

 作品を審査させていただきました。

 まんがに対する情熱と愛情を感じました。ただ説明入りのまんがが多かった気がします。まんがは解りやすいと、人に読まれやすくなります、と思います。
 学生であるみな様は、のびしろが多くあるので、これからを期待しています。
 

岩神よしひろ 先生

 今回も、楽しくも大変な審査でした。
 サブスクでは、コマを小さく割った作品が多く、読むのに時間がかかってしまった。また、どうしても説明っぽくなってしまって、少し損をしていた感があります。
 昔話しネタや、ピクトグラムネタは複数の学校が出して来ており、かぶってしまい、もったいなかったですね。その中で通過した作品は、思いつきを絵にしただけでなく、しっかりと伝えたい事を描けていました。
 1度良いネタが出たとしても、もう1度これでいいのか?と問い直して、ネタのブラッシュアップをしてみてください。キットもっと良い作品になるはずです。