第32回まんが甲子園予選審査会 審査員の先生方の講評

2023/06/28
令和5年6月16日(金)に行われた予選審査会での審査員の先生方の講評をご紹介します。

山根青鬼先生

 私の選考基準として、先ずアイデアの良さを選ぶが、コマ割りよりひとコマ。説明文(ふき出し)が無いもの。そして笑いが有るもの。
 今回のテーマに対して高校生達は素晴らしいアイデアを出しているのには驚いた。コロナがようやく終息に近づいたせいかアイデア作りにたっぷり時間をとれたのだろう。本選が楽しみだ。
 

くさか里樹先生

 200校超えの挑戦がとても頼もしかったです。
 難しい構図を描きこなせる力は確実に身についていると思います。反面、不要な部分を削り、シンプルにする作業が苦手になってるような気がします。
 ここをこうすればものすごく良くなる、という作品があまりにも多くてとてもとても残念でした。ブラッシュアップ選手権みたいなものをやるとおもしろくてためになるかも。
 デジタル利用で作業が楽になった分、アイディアを練り上げるところで差が出るでしょう。練り上げる楽しさと喜びを本選大会でバクハツさせてくださいね!


Moo.念平先生

 全体を見渡して、漠然とだが“重い”と感じた。何か「1色」足りない印象……それが何かハッキリしないまま審査・会見を終え、その足で高知県が誇る漫画施設【まんがBASE】に寄り、ズラリ並んだ漫画雑誌や漫画家の色紙を眺めていて分かった……足りなかったのは「まんが色」だったのだ!!
 もちろん漫画というものに特定の色があるワケではないが、漫画は本来“楽しい(「笑い」だけでなく「ワクワクドキドキ」「感動」「涙」「解放」等々、心を揺さぶるもの全て)もの”で、私たちプロは読者がどんな時でも思い出して笑顔になれるように、前進する力となるように願いながら作品づくりをしています。その時、作品が纏うもの…あるいは中から迸るのが「まんが色」なのだ!
 それは描き手の“健康的なサービス精神”とも言えるもので、大ベテランのプロの長編作品にも、3才の幼児が描いた「お母さんの顔」の中にも在るのです。
 今回の「まんが色」不足には、いくつかの原因が考えられます。
・膨大なセリフを処理する為コマが小さくなり、そのまま絵も小さくなった。
・CGで表現方法が広がり、質感追求やグラデーションを使いたがってしまった。
・アレもコレも全部つめこんだ結果、メインキャラが目立たなくなってしまった。
―――せっかくのネタが技術(のようなもの)に埋もれてしまっている!
 完成度の高い絵とは、”緻密さ“ではなく”作者の思いが100%伝わる“絵の事です。今一度、街中のポスター・道路標識・そしてプロの漫画作品を見て、なぜ目を引くのか・何が省略されているか・魅せる為にどんな技術が使われているかを、皆で話し合ってみよう(先生も一緒に!)。

 博識で有名なタレントのタモリさんは「知識ってのは、ひけらかす為にあるんじゃない。遊ぶ為にあるんだヨ♫」と言ったそうです。どんなに上手い漫才コンビでも、舞台で“練習量”が見えてしまうと全く笑えなくなってしまう。伝説の漫才師・横山やすしが生前、司会を務めていたある新人漫才コンテストで発した「お前ら、まず自分を笑わさなアカン!自分を盛り上げてからステージに出てこな、客を笑わす事なんかでけへん!!」という、エンタの真髄とも言えるアドバイスにはシビれました♡エンターテイメントのひとつである「漫画」もそうあって欲しいと私は思います。

 漫画『ドラえもん』「重力ペンキ」の回を私は小学3年生の時に読み、50年たった現在も鮮明に記憶に残っています。“完成度”という言葉でいつも思い出すのがこのお話で、私の創作活動のベースでありお手本です。プロになって初めて分かった、児童向け短編に注がれたプロの超絶テク!…いやそんな事より、描いている藤子不二雄先生の楽しそうな表情が浮かんでくる名作です。特にラストの大ゴマは最高に楽しい1コマ漫画♫ゼヒ読んで下さい!アニメじゃなく漫画のほうですヨッ!!
 3分の歌も、2時間の映画も、1枚の漫画も感動の密度に変わりはない。アナタの手で、君たちの力で、ずっと心に残る作品を生み出してくれ!こうなってくると、私だけが最後まで票を入れなかった『マヨコーン』が他のどれよりも輝いて見えてきた…う~んアイツはスゲエ!!

 

ひのもとめぐる先生

 お、お、惜しい!!という作品が多かった予選審査でした…
 絵は良いけれど意味が今ひとつわからない、セリフは良いけれど絵がちょっと違っている、文章や設定がまとまっていない、あと一歩!あと一息!という作品が多かった。
 セリフの位置や絵の大きさ、順番や色合い、まんがには細部のひとつひとつまで意味があります。プロの作品はそれが良くできていて、読み手はなかなか気づきません。それができていた作品が本選への出場を決めました。
 プロは日夜そのことを考えながら作品をより良くしています。主にその作業は「ネーム」と呼ばれます。セオリーや理論を使って作り込んでいる場合もあれば、突然何かが降りて来る時もありますが、それをなるべく掴んで作品を仕上げたいです。
 わかりやすく、面白い作品になります。
 意外と審査員は細部を見てじっくりと考え込んで、メッセージを読み取ろうとしています。本選作品もそれをじっくりと読み込んでみなさんのメッセージを受け取りたいと思います。
 予選の210校のみなさんのメッセージは届きました。これからもたくさん描いて、上手くなってほしい。そしてたくさんいろんなものを伝え続けてみてください!
 


ちさと先生

 審査をさせていただき感じたのは思いです。
 テーマに対して、どのように思い、どのように表現しようと思い、 
どのように絵にあらわすかの思い、 
その思いが作品となり、見る者に伝わっていく、
これは本当に素晴らしい事だと思います。
 審査をさせてもらい「まんが」の素晴らしさを再認識させてもらいました。
 高校生のみなさまは今回の結果とは関係なしに「まんが」を描きつづけてほしいです。
 


岩神よしひろ先生


 今年も皆さんの力作楽しませていただきました。年々デジタル仕上げの作品が増え見ごたえある審査となりました。
 これからは増々デジタル作品が多くなるのではないかと審査員の皆と話したことでした。
 また、アナログ仕上げで味のあるおもしろい作品も多くてほんとに審査は難航しました。