第31回まんが甲子園予選審査会 審査員の先生方の講評

2022/07/14
令和4年6月14日(火)に行われた予選審査会での審査員の先生方の講評をご紹介します。

山根青鬼先生


決められたテーマを高校生がこんなにいろんなアイデアで漫画を描いてくれた事に驚きと共に日本の漫画界は益々発展するだろうと確信しました。
漫画は日本の文化として今や世界に広がりつつあります。
このまんが甲子園から素晴らしい漫画家が生まれることを期待します。
私も審査員として勉強になりました。

くさか里樹先生

全作品、精一杯の工夫が凝らされていました。
クラブの仲間たちと力を合わせてチャレンジしている様子が目に浮かびました。
文字やセリフで説明している作品が多かったですね。
説明が多いのはたいていの場合マイナスですが、今回それほど違和感を感じませんでした。テーマが難しかったからかもしれません。
凝った構図を上手に描いている作品がたくさんありました。
とても手慣れていると感じました。反面、これが描きたかったという強い意思を感じるものが少なかったように思います。自信を持って大胆にアイデア作りを楽しんでくださいね!

Moo.念平先生

『宇宙ゴミ』と『∞(無限)』、どこかイメージの重なる2つのテーマ。応募作品の中にはパット見、どちらとも取れそうな絵や、明らかに両方入れてきた作品(サービス精神?)もあったが、今回のような場合は絶対に他方に見えない絵、1つのテーマのみに特化した絵を描くべきです。他の要素が入ってしまうのは“大らか”なのではなく、絞り込みが甘いという事。印象の近い2つのテーマが提示された時は…「これは試されているのだ!」と考え、まず2つの共通点を削り落として、本質的な違いを確認した上で、それが一番活きる作品づくりをするのだ。B4サイズの紙にスペースの余裕は無い。登山のリュックに浮き輪を入れてしまったら大事な物が入らなくなる。作品を面白くする為の、必要な物を見極める“漫眼(まんがん)”をシッカリ持つ事!
今回、審査会場に入った途端、“宇宙空間”の多さにビックリ。
『宇宙ゴミ』テーマだから当然?これは仕方の無い事なの?・・・・・・
いや違うっ! あえて言おう、発想がせまい(宇宙と逆で)と!! 
例えば、大食らいの人物自身ではなく、鍋釜カラッポのキッチンを描く、世界一週は地球儀で代用、巨人はその足跡だけで大きさが分かる(ブルース・リーの『死亡遊戯』!)、今回で言えば・・・小さな窓からゴミしか見えない宇宙船の室内を描けば、全宇宙がゴミで満杯だと一目で分かる。ご存じ『ドラえもん』は夢広がる未来世界をポケット1個に集約して見せた。
楽しい見せ方をどんどん考えよう。漫画に不可能は無いのだ♬
『無限』というキーワードから、M.C.エッシャーの作品をそのまま使用したものが少なからずあった。ヒントにするのは良いが、そのまま丸ごと使う事には苦言を呈したい。私は君の考えた「無限階段」、君たちが作り出した「永遠の滝」が見たいのです。また、おとぎ話の引用もその認知度に頼ったものであり、万が一その物語を知らない者には意味不明となる危険も孕んでいる。これらを全面禁止にする事は難しいが、現代の高校ペン児の胸を張った“創作”に期待したいゼッタイ!!
―――しかし、これらの思わくを全て飛び越えて、最高の1枚がありました。
「蓬莱(ほうらい)の玉の枝」を手にしたかぐや姫の絵・・・・・・あれは素晴らしかった。私の、今回の予選NO.1です!

ひのもとめぐる先生


久し振りの高知県での予選審査会。
少しずつ勝手が変わり、オンライン応募になりました。プリントアウトの作品をきちんと読み、受け止められるかドキドキでしたが、結果はこの通りです。
素敵な作品をありがとうございました。
「∞」「宇宙ゴミ」というテーマは、作画が難しかったかな?という印象でした。なので、絵に力を入れるために、話が弱いかも?と思ってしまいました。
例えば、流れ星=宇宙ゴミというネタが多かった。ネタかぶりとしても問題だけど、隣の席のクラスメイトに言ってみて、ウケるか?を考えてみてほしい!「わあ!物知りだね」とか「ふーん」と返ってくると思います。
「それがさあ、こういうのだったらおもしろくな~い?」って思いついたとこからが実は勝負なのです!
そこに「個性」が出てきます。おもしろさは「笑える」「楽しい」でも「悲しい」「つらい」でもいいんです。
そういうことを伝えるのが「まんが」だと思うので、みなさんの「個性」お待ちしています。

クメヒロオ先生


今回のテーマの2つ「∞」と「宇宙ゴミ」はちょっとかぶっているようなところもあったかもしれません。それでちょっと中途半端な感じの作品もときどき見受けられました。
そのなかでも、やはり絵の持つ力をあらためて感じました。よく意味が分からない作品でも、どこか気になる、心にひっかかる絵は決してうまくはなくてもユニークさがあるものは残したいと思いました。

岩神よしひろ先生


新型コロナの影響でクラブ活動もままならない学校も多い中、それでも多くの作品の応募ありがとうございました。
全部力作ぞろいで審査は大変でした。
宇宙ゴミのテーマでは、ストレートに描いた作品が多く、もうひとひねりすればもっとおもしろくなるのにな!というものが多かったように思います。一見宇宙とは関係ないものとコラボさせる事で思わぬ相乗効果が生まれたかもしれません。
∞はネタかぶりは多かったですが、ひねりを加えた作品が多かったように思います。
本戦に選ばれなかった学校も本当に紙一重の差でしかありませんでしたよ。またぜひ応募をお願いします。