【大会議】早瀬マサト先生トークショー レポート

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更新日 : 2017/04/05

ヒーローは永遠なり〜今宵は(おとこ)(たち)で語りあおう〜

 

 

昭和そして平成の今も受け継がれる石ノ森章太郎先生のヒーローたち。その先生のアシスタントを晩年まで務めた早瀬先生を迎えて、語り尽くせないほどの石ノ森作品の魅力をヒーロー愛がとまらないMoo先生とともに大いに語り合いました。


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■出演者:早瀬マサト先生

     Moo.念平先生

     千野秀和(NHK高知放送局アナウンサー)

 

▼石ノ森先生のもとで10年アシスタントを経験。

千野秀和(以下、千野):「漫画家大会議」次のプログラム「ヒーローは永遠なり〜今宵は漢達で語り合おう〜」のコーナーです。ショッカーの仮面を用意させていただきまして、今日は逆にショッカーと戦うライダーたち、そういった昭和のヒーロー、平成のヒーローたちもトークのなかには登場してまいりますので、みなさんにはたっぷりと楽しんでいただきたいと思います。それではゲストの方をお呼びいたしましょう。仮面ライダーシリーズのキャラクターデザイナーであり、漫画家の早瀬マサト先生です。続きまして、「まんが甲子園」の審査員として、そして大の雑談王としてご活躍いただいております、ヒーロー大好物、漫画家のMoo.念平先生です。

<ショッカーの衣装で登場するMoo先生、千野アナと早瀬先生を相手に暴れる>

Moo.念平(以下、Moo:よろしくお願いいたします。

千野:ショッカーは、そんなに強くちゃだめだいっ!(笑)

早瀬マサト(以下、早瀬)しかもこれは、石森プロ・東映が認可していないパチモンです。許可を得てないですから本当の悪の戦闘員です。ショッカーの上をいきます。(笑)

千野:有り体見ると、ただの悪いやつ。あの目も見えづらくて、なによりしゃべれない。しゃべらないほうがいいかもしれませんけど。(笑)

千野:さあ、さっそくですけど、早瀬先生は何度目の高知ですか。

早瀬:最初に来たのは2012年の漫画甲子園のゲスト審査員で、今回2度目になります。前は「高知城歴史博物館」はできていなくて、今日拝見したら非常に面白くて、「変わり兜」のコーナーに髪の毛の生えている兜があるんです。兜をかぶってないんじゃないかと思わせる。それは人間の形をした耳も付いているわけで、これはアイデアの参考になるんじゃないかと思いましたね。

千野:ぜひ。ここを治めていた山内家のうさぎの兜もあったと思います。

早瀬:お土産物で商品化もされていましたね。あれは名前が付いていましたね。

千野:うさぎにちなんでゆるキャラが…名前忘れました!

Moo:いいですね。共感が持てます!

早瀬:それをかぶって記念撮影ができるようになっているんです。

千野:そうです、そうです、大名気分になれるという。ぜひ、これからのヒーローに。「これ高知県の博物館に飾られているのがモデルじゃないの」みたいな。

早瀬:髪の毛が生えてきているライダーなんて怪しいですよね。

千野:それ、生々しい感じになりますよね。Moo先生は(漫画家大会議は)レギュラーですね、ずっと高知にいるんじゃないというくらい。

Moo:ここ一年で限って言うと、長崎に帰った時間より高知にいる方が長いです。ヒーロー番組でも第二の故郷という言葉がよく使われますが、まさに高知が僕にとってそうです。

千野:もちろん「まんが甲子園」に今年も。

Moo:はい呼ばれました。もう、四半世紀呼んでもらっています。

早瀬:私も1回審査員に呼ばれたんですが、甘く見ていたんですよ。というのは、高校生たちがほんとうに一生懸命描いている。もちろん、若いから絵が稚拙だったりするんですけど、そこに隠された意図が、私たちが気づいていない意図があるのかもしれないと思って、本当に一生懸命見るわけです。「見落としてはいけない、見落としたらかわいそう」と。そもそも見落とすくらいわからなかったら駄目なんですけど、審査員としては見落としたくないわけです。脳の違うところを使い切って疲労困憊してしまうんです。

千野:それが、本当のヒーローです。(笑)

Moo:イー!

千野:若者たちの思いを最大限にくみ取って。

早瀬:そう思います。

Moo:29(歳)から呼んでいただいて、今53。今年54になります。54です!

千野:何のアピールですか。(笑)さあ、そろそろ本題に行きましょう。今日はヒーロー漫画について語り尽くす、というわけなんですけど、「仮面ライダー」「キカイダー」などヒーローといったらいろんな名前が挙がってきますが、なんといってもヒーローの生みの親といえば、石ノ森章太郎先生です。

早瀬:私も石ノ森先生のファンで石森プロに入ったわけです。入るときにすごく心配をしていて、石ノ森先生が悪い人だったら、私に対して厳しい人だったら私は石ノ森先生を嫌いになって、イコール作品も嫌いになってしまうかもしれない、とすごく心配をしたんです。けれど入ってみたらすごく大らかで、スケールの大きい懐の深い方で、だから私、ずるずると石ノ森先生のアシスタントを10年も続けてしまったんですね。

千野:最晩年に所属されたアシスタントになりますね。

早瀬:そうです、もちろん私のあとに入ったアシスタントも何人かいるんですけど、最後まで残ったのが私と他に数人いたんですけど。

千野:そのうち連名での作品タイトルだとかありますもんね。

早瀬:ああ、石ノ森先生と私が。石ノ森先生が生きていらした頃には、私は居心地がよすぎて自分の漫画を1ページも描かなかったんですね。だから逆に石ノ森先生は僕が漫画を描けないと思っていたと思いますよ。

千野:あっそうか、そういうことなんですね。

Moo:実際、描く暇もなかったでしょう。忙しくって。

早瀬:私はわりとのんびりしていました(笑)。すごくほんとに優しい先生だったんです。

Moo:へえー。

早瀬:徹夜仕事とかしていると「俺がこれからみんなのために夜食をつくってやろう!」と言って。

Moo:えーっ、仕事してください!(笑)

早瀬:そうですよね!でもあの方は本当に手が早くて、ばりばり原稿を描かれるわけですよ。最近、Moo.念平さんは、出版社にカンヅメになったという噂を聞きましたが。

Moo:えっ?知らんなあ。(笑)

早瀬:石ノ森先生は、たぶんカンヅメになったことはないんじゃないかなあ。一晩で20枚とか描きますし、私が入ったとき石ノ森先生は50歳なんですけど、今、私とちょうど同じ年。

Moo:ああー。

早瀬:その頃で、月に300枚描いていたんですね。

Moo:えー、何ですって300枚!

早瀬:それを見て、「あっ私は漫画を描いちゃ駄目だ」と思ったんです。(笑)でも後からわかると、今ギネスブックに登録されていて、世界一の枚数を描いている漫画家なんですね。だから、「世界一の人を師匠に持つとそりゃ描かんわな」と。

千野:すごすぎたんですね。

早瀬:そうです。本来は漫画家って、徹夜、徹夜でやるような仕事じゃないですか。だから、時間がないというイメージを持っていますよね。でも石ノ森先生は早いので、一晩原稿を描いたあとに、本を一冊丸ごと読むとか、映画一本見てから寝るタイプだったんですよ。先生はショートスリーパーで、たぶん3時間くらいしか寝てないと思うんですよ。だから、漫画を描くことで放出するだけじゃなくて、映画を観て吸収する。アウトプットとインプットがちゃんとできているんですね。

 


早瀬先生 Moo.念平先生

▼石ノ森作品のヒーローキャラクターに見る発想の斬新さ。

千野:石ノ森章太郎先生についてじかに目の当たりで学ばれてきた早瀬先生に解説をしていただきたいと思います。

Moo:貴重ですね、これは−。

千野:実際に、先生の作品に関する画像などもスクリーンに表示させていただきながら。

<画像・石ノ森先生が漫画を描いている漫画>

早瀬:これは、私が始めてデジタルで参加した絵です。

Moo:いい絵ですね、これはいい!

早瀬:これは、原稿投げているさまを描いたんですけど、これって普通漫画の誇張じゃないですか。でも石ノ森先生は実際にこうやって投げます。

千野:えっ!

早瀬:執筆室の隣にアシスタントたちのいる部屋があるんですけど、そのドアに向かって原稿を投げる。

Moo:まだ、インクが乾いてなかったりしませんか。

早瀬:乾いてないです。乾いてないですから、1枚飛ぶたびにすぐに入り口あたりにいるアシスタントは原稿をぱっと拾って。

Moo:ひっくり返る前に。

早瀬:そうです!

千野:テニスのボールボーイみたいですね。(笑)

早瀬:そうです、2枚目が来ちゃうと、1枚目の下の原稿がパーになってしまうので。それくらい早いんです。ビックリします。

千野:その間に、やばい、早くとっとけ!っていうくらい早いんですね。

早瀬:そうですね、ドアの近くには一番ぺーぺーのアシスタントがいて、だから仕事する暇が無いんですよ。拾わなきゃいけないから。

千野:しかも、プレッシャーがかかるじゃないですか。

早瀬:そうです。

千野:早瀬先生もそんな時代があったんですか?

早瀬:私が入ったときには他に若い方がいたのでやっていません。だからその景色を見て漫画にできたわけですね。でもね、一番最初に原稿を見るんです。それはそれでうらやましい。

千野:一番の贅沢でもありますよね。

Moo:誇張はないんですね、このイラストに。

<画像・サイボーグ009>

Moo:これは有名な絵ですね。かっこいいですね。

千野:そうですね、イメージイラストですね。

早瀬:「009」は代表作で、ライフワークでもありましたね。石ノ森先生は、ヒーローをいっぱい作っているんですけど。

<画像・仮面ライダー>

千野:すごいきれいなライダーですね。

Moo:ほんとですね、端整な顔立ち。

早瀬:今、「キュウレンジャー」というのもやっていますが、戦隊も石ノ森先生が最初に作られていますね。

<画像・ゴレンジャー>

千野:懐かしいですね、不思議な流線型の目が記憶に残っています。

早瀬:この、赤レンジャーという発想がまず素晴らしいですね。当時は赤のランドセルは女の子が使う。今は戦隊ものがずっと続いていますから、赤いヒーローというのが珍しくない。でも当時は、すごく新しくて斬新だったと思いますね。

千野:そうですよね、確かに5色を使うというのはあったかもしれないけど。

早瀬:赤は女性のイメージがありますよね。やっぱり、黒とか青とか紺とかがヒーローのイメージですよね。

千野:そのあたりの色彩感覚みたいなところで先生と話したことはあるんですか。

早瀬:そういう話はしたことないですけど、発想が普通ではない方なんですね。これは仮面ライダーですね。(笑)

<画像・昆虫のバッタの顔>

Moo:違います、バッタです。(笑)でも、納得します。

千野:原点です。

早瀬:これをヒーローにしようというのは、普通はやっぱり思わないですよね。

千野:本当ですよね。

早瀬:だからビックリしますよね、石ノ森先生の発想って。

Moo:確かに!

早瀬:石ノ森先生の描いたボツの中にはこんなデザインもあったりしますから。

<画像・ヒーローのスケッチ画>

千野:これは、カタツムリ?

早瀬:カタツムリですね。たぶん、粘着液でベタベタして敵をやっつけるライダーだと思うんですけど。

Moo:これ、ライダーのデザインですか。

早瀬:動きはのろいです。

千野:でしょうね、高くも飛ばないし。

早瀬:飛ばない!でもひょっとしたらバイクに乗らないと間に合わないかもしれない。

千野:バイクには乗れそうですね。

早瀬:でも、走ったあとに、私のところにネバネバの粘着液が残るでしょうね。

千野:からめとってやっつける、みたいな。

Moo:あんまり、胸のすくヒーローって感じじゃないですね。(笑)

早瀬:だからね、とにかく発想がすごいですよね。あっ、これが「人造人間キカイダー」という作品ですけど。これは元ネタですね。

<画像・人造人間キカイダー><画像・理科室の人体模型>

早瀬:小学校の理科の実験室にあった人体解剖図ですから、デザイン的なコンセプトとしては、赤が悪、青が善、悪と正義が戦っているロボットということで「キカイダー」は誕生しているんですけど、元ネタはこれですね。

千野:動脈・静脈や筋肉とか、こういった色や質感が影響しているんでしょうかね。

早瀬:でも、普通はそれをヒーローにしようと考えないですから。

Moo:敵方のデザインですよね。

早瀬:そうですね、あと、非常に面白いのは、「キカイダー」は縦分割のヒーローになっていますよね。「仮面ライダー」は横分割。さっきのバッタの顔から作られているんですが、これが、「仮面ライダーV3」になるときに縦分割になるんですね。

Moo:はいはい、そういう目で見ると。

早瀬:それをふまえてこれを見ていただくと、「ハカイダー」は横分割。

<画像・ハカイダー>

Moo:ほんとだー!上下になっていますね。

早瀬:だから、非常にわかりやすいですね、「キカイダー」が色を使ったキャラクターだからそれで全てを塗りつぶすような暗黒のキャラクターとして「ハカイダー」がいるんですよね。すごく構図的にもはっきりしていますし、わかりやすいですよね。それと同じことを、石ノ森の弟子で私の兄弟子になる永井豪さんがやっているわけですね。縦分割のキャラクターを。

Moo:(マジンガーZの)あしゅら男爵ですね。

<画像・あしゅら男爵>

早瀬:このあしゅら男爵の後継となる幹部がブロッケン伯爵で、今度横分割になるわけです。

Moo:なるほど!面白い!

千野:ホントに分割されちゃった。

早瀬:このへんが師弟の流れをくんでいるデザインですよね。さっきのあしゅら男爵というのは石川賢さんがデザインするときに全体を描くのが面倒くさかったので真ん中に線を引いて半分ずつ描いた。でもそれを永井豪さんが見て、「これは面白い」と決めたんですから、アイデアの源泉というかそういったものが石ノ森先生のところから出ているのではないかなと思いますけどね。

Moo:面白いですね、その系譜が。

千野:さっきから早瀬先生の解説をきいていると、こんなものをヒーローにしたという流れが石ノ森先生は本当に多いんですね。

早瀬:多いですね。「見たときにドキッとするデザインじゃないといけない」とずっと言っていて、「そうじゃないと心に響かない」というふうに言っているんですね。それが形や色に出ていると思うんです。だから「ゴレンジャー」なんかは非常にシンプルな形ですけど、やっぱり5色いるというのは当時ショッキングでしたから。

千野:一番かっこいいイラストですね。

Moo:スピード感ありますね。

早瀬:石ノ森先生が素晴らしいのは、バッタは昆虫ですから人間ではないわけですよね。目の位置が本来の人間よりも高い位置に設けられているんです。仮面ライダーの着ぐるみで言いますと、そうすると目の下黒い部分、そこが本来の人間の目でのぞき穴があります。これおでこに目があるんですよ。私は平成ライダーのデザインをやってきましたけど、それがずっとできなくて人間の目の位置に描いて、のぞき穴をかくのが非常に難しい。

Moo:なるほど−。

早瀬:人間をベースに考えると、そうなっちゃうんですよ。おでこに目があるキャラクターってまずないんですよね。「ウルトラマン」もちゃんと目の位置に目がありますから。やっぱりそのほうが収まりがいいしバランスが取りやすい。それを最初の「仮面ライダー」で石ノ森先生が跳躍していくんですね。凡人ならざる発想の持ち主だなと思いますね。

Moo:まさしく!

千野:逆にそういうデザインなってもかっこよく見せる構造になっていたんですね。

早瀬:そうですね。これは「仮面ライダーアマゾンズ」ですね。

<画像。・仮面ライダーアマゾンズ>

Moo:かっこいいー!

早瀬:とてもヒーローとは思えない。

Moo:ほんとですね!

早瀬:しかも設定上はしゃべれない。しかも半裸。

Moo:ターザンみたいですね。

早瀬:それがヒーローになるとは思えないですよね。仮にそれを思いついたとしても実行しないと思うんです。

千野:怖いですよね。一番とは言いませんがきわめて印象的なヒーローとして有名なライダーの一人ですね。

早瀬:今でも大好きな人が多いと思います。石ノ森先生は本当に素晴らしいです。原稿枚数にしてもアイデアの発想力にしても、かなわないという思いが強かったですね。でも、代表作である「009」の完結編を描くに至らず石ノ森先生は病に倒れてしまったんです。けっこう闘病が長かったんですよ。病室で原稿を描いたりもしていたんですけれど、最後まで「009完結編」に関しては思いが強かったものですから、病床で小説というかたちで書いたりとか、完結させなければという思いが強かったようですね。石ノ森先生が亡くなってしまったので私が引き継ぐことになったわけです。ただ、私はほぼ漫画を描いたことがなかったですから、(闘病中の)石ノ森先生がちょっと自分では描けないと言って、途中で中断していたキャラクターの完結編ですから、プレッシャーがあるという話ではなくて、私はやめたくてしょうがなかったです。やれると思ってないですし。それで途中からシュガー佐藤さんという私の先輩の漫画家にバトンタッチをして描いていただくことになったんですけど。ただ、この小説を最終的に完成させたのは息子さんの小野寺丈さんという方なんです。小野寺丈さんの思いとしては、一人の漫画家に「009」を描かせるんではなくて、石ノ森の弟子だった漫画家たちにそれぞれの章を描かせて、集大成として「009」を作りたいという希望があったんですね。

<画像・サイボーグ009>

早瀬:それが実現したのがこれで、最終巻の5巻にこのピンナップをつけたんですけど、左右にいる「009」と「003」が永井豪さん。

Moo:はー、いいですねこれ、素晴らしいですね。

千野:これ、ヤバイですねー!うわー。

Moo:初めて見ました、いいですねーこれ!

早瀬:こんなことをしてしまっていいのかって感じですね。上の二人、「002」と「006」が桜多吾作さんですね。

Moo:ほんとだー!わかりますね。

早瀬:真ん中のハードボイルドのちょっと黒いのが石川森彦さん、石と森を名前にいただいているアシスタントの方ですね。今の地位が高い人順にいいキャラをとっていっているんですけどね。(笑)私が選びました、永井豪さんには、「009」と「003」じゃないと失礼にあたると思ったんですね。しかもその本には、石ノ森先生と同年同月生まれだった松本零士さんもサポートしてくださって、松本零士さんの「009」も非常に珍しいんですよね。

千野:先生に寄せて描かれたんですね。

早瀬:松本先生は、今だにちゃんとカラーをご自身で塗られるそうで、貴重ですよね。

千野:そうですか。ほんとうにお手製のイラストですね。

Moo:面白いです!


石ノ森先生 009

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▼昭和のヒーローは、みんなが夢中になった仮面ライダー!

千野:さあ、行きましょうか、核心に。石ノ森先生のご功績を話し出すと、本当に1時間では済まない、ということがよくわかりました。昭和のヒーローについてお話をうかがっていきたいと思います。

Moo:われわれの時代ですね!

千野:Moo先生、石ノ森先生がいたから、昭和のヒーローというものがかたち作られた。

Moo:まさにそうですね。昭和のヒーローが一冊になったブックがあると、どこをひらいても石ノ森先生がつくったものばかりなんです。これは誇張ではなく本当にそうなんですよね。どんだけ、空気みたいにわれわれが体の中に取り込んでいたか、よくわかります。

千野:やっぱり、その流れでまずは「仮面ラーダー」ですね、いくつかイラスト登場しましたけど、お話をしていきたいと思います。ここで、なぜか会場に、ライダーを語るのにうってつけの方が来ています。では、Moo先生お呼びいただけますか。

Moo:高知在住の、ヒロスエさん、ヒロスエさーん!上がって来てください、あっ上着を脱ぎましたね、何をするんでしょう彼は。

千野:なぜ、この方を壇上にお呼びしたかというと、「仮面ライダー」といえば、Moo先生何ですか?

Moo:変身ポーズではないかと思います!

千野:ですよね!なんとその変身ポーズをコンプリートしているという。

Moo:なんと今、ライダーはもう何十人といますけど、一通り全部できると!

ヒロスエ:厳しい方が見ると、こいつ甘いなあという感じやと思いますけど、ある程度、僕の中ではコンプリートしています。(笑)

Moo:いくつかぜひやってもらいましょう!

千野:じゃあ、最初は早瀬先生から。

早瀬:やっぱり、「仮面ライダー1号」ですね。私も当時子どもで、テレビを見ながら真似をしたんですけど、あっ、一番最初は「2号」からでしたね。

Moo:あっそうだ、一文字隼人の変身ポーズだ。

早瀬:テレビを見ながら真似をするので腕の動きが左右逆なんです。私はずっと逆でしみこんでいるので、もう元に戻らないんです。

Moo:正しい形をぜひお願いします。

<仮面ライダー2号などの変身ポーズを解説付で数々披露するヒロスエさん>

早瀬:当時は「仮面ライダー1号」は変身ポーズがなかったわけですね。ベルトの風車に風を受けて変身するという設定でしたから、バイクに乗っていれば変身できたわけですね、それが藤岡弘さんが、撮影中の事故で降板してしまって、佐々木剛さんに変わったときに、佐々木剛さんがバイクの免許を持ってらっしゃらなかったので、それができないということで考えられたのが変身ポーズだったんですね。

早瀬:ほんとうに藤岡さんには申し訳ないですけど、「藤岡さん、事故をしてくれてありがとう」という感じですね。(笑)

Moo:そうですね、ケガの功名とはまさにこのことですね。

早瀬:変身ポーズがなければこれだけヒットしなかったかもしれないし、しかも負傷されたから2号ライダーという概念も、そこでもう生まれているわけです。

Moo:そうだっ、シリーズ化を可能にした!

早瀬:だから、二重の意味で、仮面ライダーの歴史を作った藤岡さんの事故のおかげですね。基本的に仮面ライダーの変身ポーズっていうのは、当時アクション監督をされていた高橋一俊さんと考えられているんですけど、唯一、石ノ森先生が考えた変身ポーズがありまして、それは仮面ライダーではないんですけど、「キカイダー01」の変身ポーズなんです。

Moo:えっ!いけますか!

<「キカイダー01」の変身ポーズを披露するヒロスエさん>

早瀬:うわー、すごい!

Moo:無茶ぶりでしたけど、いけましたねー。

早瀬:これが唯一、石ノ森先生が考えた変身ポーズでした。

千野:ではもう一つ、一番長い変身ポーズをお願いします。

ヒロスエ:はいわかりました、ではみんな大好きな倉田てつをさんをいきましょうか。

<「仮面ライダーBLACK」の変身ポーズを披露するヒロスエさん>

千野:BLACKに変身するのは長いんですよね。倉田さんがかっこいいから、変身シーンが長いんですよね。

Moo:力が入っていますね、腕が震えるくらい力がみなぎっていましたね。

千野:では、これからも末永くライダー人生を送ってください。(笑)ありがとうございました。

Moo:あとでまた見せてね。ヒロスエさんでした、ありがとうございます!

<拍手>

Moo:すごい、かっこいい!

千野:これだけ愛されるキャラクターだということですね。

早瀬:そうですね。しかもずっとそれを作り続けているというのもすごいですよね。二本の腕でどれだけバリエーションがあるかって世界ですからね。

千野:本当ですね。しかも「変身!」って言うしかない縛りがいっぱいですもんね。いろんなものを付けちゃいけないという。

Moo:いやー、いい時間を過ごさせてもらいました、ありがとうございます!

千野:早瀬さんは、子どもの頃から当然、ライダーや石ノ森先生の作品に親しまれて今漫画家として活躍されているわけですね。

早瀬:私が「仮面ライダー」に出会ったのは幼稚園の頃だったんですけど、その頃はビデオとかがなくて録画ができないわけですよね。一週間に一回の放送を心待ちにしていて、それが命がけなわけです。そのときを見逃したらもう見られないわけですから。まず、家族からチャンネル権を奪わなくてはいけない。だから、その放送が始める1時間前くらいからそのチャンネルにもう替えておく。

Moo:なるほど。(笑)

早瀬:あと、病気になっちゃいけない。風邪を引いたりすると両親に病院に連れて行かれるかもしれないから。それは、細心の注意を払いましたね。

千野:なるほど。

早瀬:でも、一週間が待ち遠しくてまたらないわけですよね。

千野:昔はそうでしたよね。

早瀬:そうすると、子どもにとっては一日が長いし、一週間長いですからね。大人になるとあっという間ですが。それを埋めるのが漫画だったんですよね。石ノ森先生の漫画はまたさらに、読者に背伸びをさせてくれるような作りをするわけですね。テレビのような勧善懲悪じゃなくて深いところを見せてくれるわけですよね。


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▼ヒーローが抱える悲しみまでも描いた石ノ森作品。

<画像・「サイボーグ009」と「仮面ライダー」>

早瀬:これは「サイボーグ009」ですけれども、孤児院を脱走した島村ジョーが、ブラックゴーストに誘拐されて改造されてしまうというシーンですね。そしてこれが、本郷猛がショッカーに改造されて、仮面ライダーに改造されてしまう。これね、全く「009」と「キカイダー」って主人公のポジションが同じなんですね。

千野:なるほど。

早瀬:ワンパターンといえばワンパターンですが、当時の私はぜんぜん気づいてないわけです。「009」「仮面ライダー」以外に「キカイダー」という作品もあるんですけど、敵の組織に騙された光明寺博士が、ダークでロボットを作ったという設定なわけです。これも仮面ライダーと同じように、同族というか自分の仲間である敵と対峙しなければいけないという設定のヒーローなわけです。この発想がすぐれているのは、ヒーローの誕生と悪の悪辣さ残酷性を同時に描写することができるということ。だから、ページ数が少なくてすむわけです。

千野:この時点で対立構造が見えているわけですね。

早瀬:そうですね、しかも、主人公は人間でなくなってしまった悲しみを背負わなくてはいけないという深いものが見えてくるわけですね。改造されただけでも辛いわけです

Moo:屈辱的ですよね

早瀬:そうですね、「009」は仲間がいるんですよ。改造されてもちろん辛いんですけど一人じゃないんですよね。そんななかで石ノ森先生が設けた設定が、冒頭にありますけど、日本人なのに髪の毛の色が違う。今はハーフっていいますけど混血児だといってね、3巻目ですごく悲しんでいる島村ジョーがいるわけです。単なる日本人にしない、もう一つ悲しみを作る。本郷剛もここにガラスのコップを力を出して割ってしまうというシーンがある。

Moo:有名なシーンですね。

早瀬:でも、それだけじゃないんですよね。顔に傷が浮かんでしまうから、それを隠すために仮面を被るっていう設定で、ちょっと深いわけですね。さらに本郷猛は緑川博士を殺したという疑いを緑川博士の娘さんに思われてしまうという。さらに、ここまで暗くしなければいけないの、というヒーロー像を作るんですね。

千野:まず、どん底にたたき落とされるという。

早瀬:まさにそうです。傷を隠すために仮面をかぶるんですね。さっきの「人造人間キカイダー」ですけど、ロボットなのにデザインがアンバランスで、自分の顔を見てショック受けるというシーンですね。

Moo:つらいー。

早瀬:辛いですね。これを悪のしかも同胞である仲間に言われてロボットでもここまで悲しまなきゃいけないという。通常の人間よりも人間らしい。その苦しみ悲しみ、背負う十字架というのが、もうたまらなかったわけですね。

千野:そこが、やがては燃える要素ですね。

早瀬:そうですね。アメリカンヒーローは単純明快で、敵をやっつけたらバンザイと喝采を叫ぶようなパレードを行うようなストーリーが多いわけですけど、石ノ森先生が作るのはそうではないですね。同胞を倒さなきゃならない苦しみ。

Moo:勝ってなおむなしい。

早瀬:そうですね。戦いが終わって敵の残骸を見下ろすヒーローの目が垂れ目に描かれていますから寂しげに見える。

千野:はあー、そうですね。解決策がないんですね、彼らの人生は。死ぬまでその姿であり続ける自分。ある意味、閉ざされた世界を描く世界系みたいな話のはしりといっていい話。限定された空間ですよね結局は。

Moo:本人に罪はなく、しかし、人間側にも向こう側にも入れてもらえずに孤独と戦うんですね。でもそのぶん、さっきのサイクロンの疾走シーンがめちゃくちゃかっこよく見えました。

千野:話の重い展開からかっこよさを演出するところまで全部入っているわけじゃないですか。ロボットとしてキカイダーは、自分醜いと思ったけど。あれはただ台詞まわしがそうなっているだけで、われわれは、さっきの前のページを見たときに「かっこいい」って思う。

早瀬:ああそうですか、もうそういう風に刷り込まれているわけですよね。

千野:そこは、両方の価値がこの作品の中に成立しているっていうことですよね。

Moo:また、10年後に読むと違った印象を受けると思いますね。

千野:大人が見たら、あっ、深い物語だと思う人もいれば、最初からそれに気づいて後からかっこいいなと、それは順番があるかもしれないですね。

早瀬:当時は、「キカイダー」がテレビに出てきた姿をみて吐いたという方もいらっしゃるくらいですから。気持ち悪いと言って。

千野:えーっ、そうなんですか。さっきの人体模型のイメージを連想したりとか。

早瀬:かもしれないですね。そういった、異形を作り出すことを目的にやっているわけですから、その意図は達せられたと言っていいと思います。

Moo:狙いどおりと言うことですよね。

千野:あの時代にこの作品を見たから思うことで、今はいろんな情報がありますよね、イラストも発達していますから。そうやって見るのとは違う部分もあるかもしれないですよね。

 

▼石ノ森先生の遺志を引き継ぎながら新しいものをつくる葛藤。

千野:でも、こうして石ノ森先生の作品をたっぷり見てきたなかで、その遺志を引き継がれた早瀬先生の活動の方にお話を進めたいと思うんですけど、平成ライダー以降、デザインをされていますし、今の時代の石ノ森作品の流れをプロデュース、あるいはデザインされているお立場で、まずお伺いしたいのは、先ほど「キカイダー」「009」出てきましたね、そういったところの話を伺っていきたいと思います。今のご自身の作家活動として大事にされていることは、これまでの世界観を引き継がれて。

早瀬:平成ライダーをやっている頃は、石ノ森が描いたボツデザインといいますか、さっきのカタツムリこそ採用しませんでしたけど、そういったものを見て、石ノ森先生が生きていたらこうするであろうなということを常に念頭に置いてやってきましたね。ただ石ノ森先生は本当に発想が飛んでいるわけですね、ここにいる仮面ライダーは、採用になってないですけど、胸が顔ですよね。

Moo:おっ、ホントだ!

早瀬:ここまで原作者は考えているという。

千野:これは先生のスケッチですか。

早瀬:そうです。「仮面ライダー電王」で仮面ライダーが電車に乗るっていうのがあって。

Moo:うん、とんでもない設定ですね。

早瀬:けっこうまわりの方から言われたんですけども。電車に乗るというのは私の発想ではないんですが、そう企画でまとまった時に、「早瀬さん反対しなかったんですか?」って言われたんですけど、「石ノ森先生はやったんじゃないの」って私は思いましたね。

千野:なるほど!

Moo:そうですね!

千野:ある程度カテゴリーを決めてしまうのがなによりよくない。

早瀬:そうですね、そのへんのハードルをぴょんぴょん越えていくのが石ノ森先生ですね。これ、すごい超えていますよね。

千野:とりあえず描いてみたはいいけど、すさまじいですよね。

早瀬:しかもこれ、わりと力が入っていますよね。さっきのカタツムリより仕上がっていますよね。けっこう本気だったんじゃないかと思いますよね。ですからさっきも言いましたけど、石ノ森の描いたボツデザインや使わなかったものを。これが「超神ビビューン」という作品の時に使われなかったものですけど、これを私がこう変えて、こうなりました。<画像>

千野:おおーっ。

Moo:かっこいいですね、これ。

早瀬:まあ、そういったことをやっていますね。あと漫画作品でいうと、さっきの「009完結編」もそうですけども、今私は、「幻魔大戦Rebirth」という、これも、1963年の「幻魔大戦」という作品を平井和正先生と石ノ森先生が共著で少年マガジンに連載していたんですが途中で終わってしまうんです。その続きを今描いているんです。ですから漫画家の方に言いたいんですけど、未完の作品を残しておくとあとでアシスタントがえらい思いをしますから、ちゃんと責任を持って完結させていかないと。

Moo:なるほど、それは永井豪にちょっと言っておきましょうかね。(笑)

早瀬:「ガルラ」もちゃんとね。

Moo:ああ、「ガルラ」ね。

早瀬:あとで桜多吾作さんが描かなきゃいけなくなる。

Moo:そういう教訓か、これは、なるほど。(笑)

早瀬:Moo.念平さんも描くチャンスがあるかもしれないですね。

Moo:まさしくっ!個人的にわからなかったのは、石ノ森先生の遺志を継ぐという作業の中で、自分の意思よりも先生の遺志を優先させることの方が多いんですか。

早瀬:多いです。私は今、漫画も描いていますが、さっきも言いましたように「石ノ森先生だったらこうするだろう」というのを常に念頭に置いているわけです。そういった意味では私は生涯、独立したものではなくて、石ノ森先生のいまだアシスタントをしている。という気持ちでいます。

Moo:あっ!名言です。

早瀬:だから私は肩書きとしてはアシスタントでいいと思っています。

 

▼作品を発表し続けることで石ノ森先生はこれからも生き続ける。

千野:それは、作品が生き続けている限り、もともと描かれた先生が生きている。

早瀬:そうです。人が死ぬということは、もちろん肉体的に滅ぶとうこともあるんですけれど、その人のことを誰も覚えていない、世界中が誰も覚えていないということが本当にその人が死んだということだと思っているんです。だから今、平成ライダーとか放送されていて「幻魔大戦」もやっていますけど、その作品が続いている以上は石ノ森先生は生きていると思っているんですね。ですから、石ノ森先生を生かそうと思って今力及ばないなりに頑張っている、そういった思いです。

千野:その中で、平成ライダーもそうですけど、早瀬先生ならではのオリジナリティーも存分に発揮されながら活動されていると思うんです。そのバランスですよね。

早瀬:難しいですよね。気持ちとしては保守的なんです。新しいものを作るということは、過去のものを否定することなんです。だからそれが気持ちとしては相反している。それが今の平成ライダーシリーズだと思うんですけど、やっぱり、時代とともにどんどん変わっていかなければいけないけれど、変わってしまうともともと石ノ森先生が開発したデザインラインが壊れてします。非常に心苦しい作業ですね。でもさっき言ったように、発表し続けることが大事ですから、石ノ森章太郎を生かすことですから。

千野:途絶えてしまうと本当にいなくなっちゃう。日々そういった葛藤の中で漫画家として活動されている。

Moo:やりがいはあるけど、しんどそうですね。

早瀬:でも、楽しいは楽しいと思いますけどね。というのは、「009」はプレッシャーが非常に重かったんですけど、「シージェッター海斗」という作品を描いているときは、私のここに石ノ森先生がいたんですよ。妄想ですけど、描くたびに石ノ森先生が「そこは違う」と言うんですよ。それは非常に幸せな体験でしたね。<画像>ずっと会話をしながら描いている感じ。それが、この作品の頃はありました。

早瀬:お二人の先生の思いが融和したイラストという感じで、話し合ったらこうなったという。

Moo:ある意味、理想的な状態かもしれませんね。

早瀬:でも、過去に石ノ森が描いたシチュエーションに似ていたりもするわけですよね。大きな逸脱はしていないわけですよね。でもね、これを変えてしまうと石ノ森っぽくなくなってしまったりして。このせめぎ合いが難しいですね。

Moo:でも、何度も出ている言葉で、「石ノ森っぽい」ということが概念としてわかるほど多くの作品を残されたんですね。

早瀬:サザエさんも本来は若い層も取り込もうとすると、カツオくんも携帯電話を持ってないとおかしいですよね。

Moo:あいつまだ持ってないんですか!

早瀬:でも、持っていると世界観が壊れてしまう。

千野:しかも今はタブレットで「タブレットやろうぜ」と中島くんに言われる。

Moo:あっはっは!

早瀬:あんな子どもは、まあ、いないわけですよね。だから、そこが悩ましいですよね。でも、制作者的に後世まで残そうと思ったら、変えるときは変えるべきでしょうし。われわれはまだ、あの時代を知っていますから懐かしい気持ちで見られますけど、子どもからしてみたら異世界の話ですよね。

千野:そうですね確かに、「赤ちょうちん」ですらギリギリかもしれない。

Moo:確かに、なるほどそうだ。

千野:逆に石ノ森先生がいろんな世界を構築して、今はいらっしゃいませんけれども、そこを逆に抜け出して行くこともなかなか大変だったりするんですか。「またこれ描いているわ」みたいな。

早瀬:とにかくいろんなジャンルを描かれていますし、いろんなページ数を描いているわけですから、手塚先生や藤子・F・不二雄先生や藤子不二雄Ⓐ先生もそうですけど、石ノ森先生って、漫画家としての代表作というか、この道のエキスパートというのがないと思うんですよ。手塚先生は、ヒューマンドラマのエキスパートと私は思っている。

千野:そうですね、いわゆるドラマ的な漫画を描かれた最初の方。

早瀬:藤子・F・不二雄夫先生は児童漫画の大家ですよね。藤子不二雄Ⓐ先生はシニカルなブラックツーモアの大家です。でも、石ノ森先生は、ヒーローものも描くし、「日本経済入門」という漫画や日本の歴史も描くし、「(ミラクルジャイアンツ)童夢くん」という野球漫画も描きました。ほんとにいろんなものを描いている。だからこれに特化しているというのがないんですね。

千野:そうですね、純然たる漫画家という感じですね。

早瀬:そういった意味では追求度合いとしては、他の漫画家の先生よりも低いと思いますね。広く浅いという感じになっていきますよね。

千野:逆に言えば、例えばヒーローであれば、先生を超えて掘り進める分野があるに違いないというある意味希望みたいなところはあるわけですか。

早瀬:あー、今、平成ライダースタッフはそれをやっているんだと思いますね。

千野:ということですね。先生も石ノ森先生と一緒にある意味これからも生き続けるために、「幻魔大戦Rebirth」もそうですし、受け継いだ作品を展開していくわけですよね。

早瀬:そうですね、それに一生懸命になっていますね。

Moo:なんかでも、全作品を読んだことはもちろんないのですが、やはり、石ノ森章太郎というとヒーローに特化していると、僕の中ではそういうイメージですね。しかし、確かにスーパーマンに代表されるような、青空の下で時には笑みを浮かべながら、快活に戦うというヒーロー像ではないですね。ヒーローの強烈な一面をずっと描き続けているような感じは確かにしますね。そして、その一面は他の人には描けない部分だと思います。

千野:石ノ森先生の漫画の世界の中では、世の中の人に評価されるヒーローっていたんですかね。

Moo:みんなから歓迎されるような。

早瀬:歓迎されてないですよね、一人寂しく去って行くという感じですよね。

Moo:そうですよね、孤高の存在です。

千野:そういったものも読ませていただきたかったかな。そこはひょっとしたら早瀬先生が描いていただけるのかな。

Moo:もう描いているんじゃないかな。(笑)そういう楽しみもある。

早瀬:いや−、そうですね。あと「漫画家大会議」という場所だから言いますけど、漫画家の先生が、名作をものにしている時って、さっきヒーロー漫画が石ノ森先生のイメージだと言いましたけど、「キカイダー」とか「仮面ライダー」とか、「変身忍者嵐」とか、「ロボット刑事」とかほぼ同じ時期じゃないですか、だから仕事量としては膨大なんですよ。永井豪さんも名作「デビルマン」をものにしたときは「マジンガーZ」もやっているし「キューティーハニー」もやっているし、すごい時期なんですよね。だからMoo.念平さんにも5〜6本連載をとっていただいて、すごく忙しい状況に自分をおいて、もう苦しくて、人間が脳内麻薬を出したときに、名作が生まれていると思うんですよ。(笑)

Moo:責任を持ってMoo.念平に伝えます。(笑)確かに、一番忙しいときに名作がいっぱい生まれるんですね。

早瀬:そうですね、不思議ですね。

千野:今、忙しさでいうと今どのくらいですか。

早瀬:僕は、一生懸命やっているんですけど、ヒーヒー言っています。


画像

▼アジアの国でも仮面ラーダーやオリジナルキャラクターが大人気に。

千野:今ほかのジャンルでもご活動はあると思うんですけど、今「幻魔大戦」などありますけれど、これからこんなことを手掛けていきたいだとか、こんなことが今動いているんだというということはありますか。

早瀬:動いているものに関しては言えないんですけど。とにかくいろんなアプローチでやっていきたいと思います。私は、日本だけじゃなくてインドネシアで「(ガルーダの戦士)ビマ」というヒーローを立ち上げたりもしたんですけど、国が変わると面白いですよね。インドネシアにも「仮面ライダー」という作品が輸出されていて、むこうで、さっき変身ポーズをやってもらった「仮面ライダーBLACK」が大人気で、「仮面ライダータイガ」がハワイで大人気なんですね。インドネシアから「仮面ライダーBLACK」みたいな作品を作りたいというオーダーがあって、もともとは東映さんにインドネシアから話が行ったわけです。でも物価が違いすぎてそれはつくれない、という話になって、石森プロがそこに残りまして協力するというかたちで「ビマ」という作品をやっているんですけど。

千野:どうですか、感触というのは。

早瀬:とにかく、日本と比べて子どもの文化が違うから、セルロイドのお面がむこうで爆発的な人気になったりしているんです。

Moo:お祭りで売っている、あの?

早瀬:そうです、あそこまでリアルなものがむこうにはないわけです。

Moo:ええーっ!

早瀬:だから、変身ベルトとかそういうものじゃなくて、あのペラペラのというかお面を喜んでつけているんです。

千野:こっちにあるような「ROBOT魂」みたいな精密なフィギュアがあるわけでもなく。

早瀬:そこまでのものはなかなか買えないらしいんですけど。なりきりおもちゃとしては、お面が大ヒットしているという。それが今度映画化もされるということになっていまして。その中で劇中漫画というのを、私ではないですけど石森プロで描いていただきまして、漫画のプロダクションと組んでいる映像がこちらでも観られるといいんですけど。

千野:そうですね、ぜひ。いつか。日本の子どもたちが通った文化が今そこにあるのかなと思ってしまいましたけど。

Moo:そうですね。

早瀬:倉田てつをさんという「仮面ライダーBLACK」に変身する役者さんがインドネシアに呼ばれて「ビマ」に出演したりとかもしていますからね。

千野:それは、何役なんですか。

早瀬:もちろん、いい役で。(笑)GACKTさんも本人が希望して変身ヒーローとして登場しています。GACKTさんは平成仮面ライダーでも、ライダーマンという役で出演してもらったことがあるんですけど、劇場版だけですけど。あのときに、われわれがGACKTさんに気兼ねをして、ライダーマンの仮面を被らせなかったんですね。嫌かなと思って。

Moo:お顔を出そうとして。

早瀬:そうです。腕につけるカセットアームというアタッチメントもちょっとかっこいいものに。いまいちだったんですけど。そしたらそれが気に入らなかったらしくて、ライダーマンのお面を被りたかったらしいんです。

Moo:あー、わかります、それ。

千野:役になりきりたかったんですね。ヒーローになるということは、全て自分を失ってでもそうありたい!ということなんでしょうね。

Moo:でも、現在の自分よりも、子どもの頃の自分を満足させたいという気持ちがあるような気もしますね。

早瀬:そうですね!今、作ってらっしゃる方はみんなその気持ちでやっていますよ。

Moo:小学校の頃の俺、見ているか!みたいな感じで。わかりますね。

早瀬:これは漫画家を目指す人たちに伝えたいんですけど、希望を持っていつまでも続けていれば、必ず夢は叶いますから、なんかまとめみたいなことを言っていますね、私。

千野:いや、そんな流れなところであります。(笑)

早瀬:時間的にそうですか。(笑)今「宇宙戦艦ヤマト」も当時ファンだった人がリメイクして作っていたりもしますし、だからね、本当に諦めずに根気よく続けていって欲しいな。特に漫画というのは非常に手間のかかる作業なんですよ。話を考えて、構成をして、下書きをして、ペン入れをして、鉛筆を消して、背景を入れて、ホワイトって言ってはみ出したところを消して、ベタを塗って、最近はデジタルでパソコン上で簡単にできるようになった作業もあるんですけども工程は変わらないんですね。だから非常に手間がかかる、それも諦めずにコツコツやっていることは希望をかなえる近道。まあ、遠いんですけど、近道だなと思いますね。だから私、コツコツ、コツコツとやっていきたいなと思っています。

千野:石ノ森先生に出会うところまでもコツコツという感じだったんですか。入ってからも。

早瀬:石森プロに入ってからも私は楽をしていましたから、おんぶに抱っこですよ。(笑)石ノ森先生はキャラクターを全身描く人でしたから、目だけ描くとか、顔だけ描くという人ではなかったので。私は気楽に背景だけを描いていましたね。

千野:一般の人から漫画家の卵というかアシスタントになるところというのは、世界が変わるわけじゃないですか、そのあたりはどうだったんですか。

早瀬:私が入ったときはちょうど「仮面ライダーBLACK」という漫画を少年サンデーで石ノ森先生が連載をしていたんですね。その漫画の欄外に石ノ森先生がアシスタントを募集していると書いてあって、それに応募したんです。それで石森プロに入ったんですね。

Moo:ほうー。

早瀬:ただ、本気で入れるとはぜんぜん思っていなくて、漫画作品は送ったんですけど当時私大学生でしたから、大学の卒業旅行のつもりで東京に来て、石ノ森先生の面接を受けたんですね。普通はその会社に入ろうと思って受けるわけですから、きちっとした格好をして神妙な感じで行くわけですよ。私は卒業旅行ですから、もうニコニコしながらですね。

Moo:バカンス気分!

早瀬:しかも、旅行だったら最後はお土産をもらって帰らないと。

Moo:そりゃそうです!

早瀬:面接の後で先生に色紙を差し出して。

Moo :いやっ、はっはっはー!(笑)

早瀬:あとから石森プロに入ってから「早瀬はひどいやつだ」と「あんな奴を入れていいのか!」というふうにマネージャーから相談があったと言われましたけどね。

千野:でも先生には気に入られたというか。

早瀬:石ノ森先生はさっきも言いましたけど映画が好きで、ビデオもたくさん観ていましたし。私も映画は非常に好きだったものですから、そういったことで話が合いましたね。石ノ森先生は業界人ですから、試写会で先に映画を観るわけです。私は基本的に初日に誰よりも早く映画を観たいというタイプだったので、初日に映画を観るとすぐに先生と映画の話をするということがわりとありましたね。

千野:けっこう、向き合い方が似ていた。

早瀬:そうですね、面接で色紙を差し出したというのも、わりと私がずうずうしいところがあって、石ノ森先生と会うときは一期一会だと、会社にいるときも思っていましたから。話しかけるときは話しかけていたわけですよね。ただ私以外のアシスタントは、どうしても石ノ森先生というのは雲の上の存在だというふうに感じて対応をされていましたね。

千野:やることをやっておくことが次につながるということですね。希望を持って。

Moo:尻込みしないで前に進むことですね。

千野:Moo先生も尻込みしないで。(笑)

早瀬:連載を5〜6本(笑)。カンヅメにされてもへこたれることなく!

Moo:二回言いましたね、はい、頑張ります!ものすごく面白い話でした。やる気が出ましたね。

千野:では改めて、先ほど漫画家を目指す方へというお話があったんですけど。ここにお集まりの方に一言メッセージがありましたらお願いいたします。

早瀬:さっき作品が残っていくことが作者が生きていることだと言いましたけど、作品を愛してずっと読み続けていただければ、これに勝ることはないと思いますので、これからも石ノ森作品を愛してくださればと思います。今日は来場ありがとうございました。

千野:変身ポーズもご披露いただいてありがとうございました。「漫画家大会議」2日目最後のコーナーとなりましたけれども、ヒーローについて熱く語ると言いますか、ほとんど石ノ森先生についての話になりましたけど、ヒーローは永遠なり。本当に永遠になってほしいなと私も祈念いたしております。「今宵は漢達で語り合おう」ということで、漫画家の早瀬マサト先生、Moo.念平先生にもおつきあいいただきました。長い時間ありがとうございました。

<拍手>

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