安倍夜郎先生インタビュー

ホーム > 安倍夜郎先生インタビュー

更新日 : 2016/09/01

深夜の放送ながら静かなブームを呼び、
今年11月5日には映画化第2作目が公開される
「深夜食堂」の原作者・安倍夜郎先生のインタビュー。
共感が得られるストーリーはどのように生まれるのか?

漫画家に必要なスキルとは?
「深夜食堂」を例に挙げながら漫画家を目指す人が必要なこと、
大切なことを語ってもらいました。

 


インタビュー

絵が上手くなくても漫画家になれる!?

―――いつ頃からまんがを描いているんですか?
小さい頃から絵を描くことが好きで、口に出したことはなかったけど、いつかは漫画家になりたいと思っていました。中学の頃は、新聞部などで四コマを描いたり、先生の似顔絵を描いたり。高校では漫画研究会を自分で作ってそこでまんがを描いていました。

 

 

―――まんがのスキルはどのように身につけたんですか?

ボクは画力や作画テクニックがある方だとは思っていないので、 難しい絵は描けないです(笑) でも絵が上手くなくても、上手に見えるように描けばいいんです。例えばラブシーンなんかだと女の人の裸を描くのってアダルト系の漫画を描いてる人の方が断然うまいんだけど、例えば手だけを描くとかパーツで見せればなんとかなったりするんです。
(担当編集者/ま、上手いに越したことはないんだけどね)
(一同/笑)
ただ、よくあるのは絵が上手くても魅力的じゃない絵。技術があって絵は上手いんだけれども、出てくる登場人物に思い入れができないものってありますよね。絵がそんなに上手くなくてもキャラクターや話にオリジナリティがあればいいんです。

 

 

―――なるほど。では、オリジナリティはどのように習得すればいいでしょう?

それがすぐに分かっていればもう少し早くデビューできてたと思いますが。ボクは高校時代、黒鉄ヒロシさんの影響を受けたナンセンス漫画を描いていましたが、限界を感じて… それからは、自分がどんなまんがを描けばいいのか、ずっと探していました。ただひとつ分かってたのは、自分の好きな漫画家の先生のテーマや作風を真似しても仕方無いということだけ。それで小説やシナリオ、戯曲、映画やドラマ、芝居、参考になりそうなものは極力読んだり、観たりしました。それでも分からないから就職したんです。仕事はテレビCMの企画・演出の仕事だったんですが、それをやっているうちに自分なりのモノの見方や描きたいものが定まってきたような気がします。結局のところ、自分でもがき苦しんで、自分の表現を見つけるしかないんじゃないでしょうか。

 

 

「深夜食堂」誕生物語


続 深夜食堂

―――映画化第2作目も上映されることになった「深夜食堂」ですが、この作品を描き始めたきっかけを教えてください。
その頃の編集担当に「医療か食かどちらかでいきましょう」と言われて、単純に医療は描けないと思ったから食で描いたんです(笑) その当時、医療と食のまんがは割りと売れ線のテーマだったんですが、ビッグコミックオリジナルの中に医療と食のまんがが無かったんです。ただ食のまんがはその頃、大ヒットしたものが無かった。あと医療は調べないと描けないけど、食は調べなくても描けると思ったんです。担当者は僕の絵がマイナーなものだからメジャーなものをテーマにしたほうがいいだろうという判断だったんです。

                                    © 2016安倍夜郎/「続・深夜食堂」制作委員会

深夜食堂

―――「深夜食堂」といえば懐かしさと共感を得るストーリーが読者を魅了する要素だと思うのですが、どのように生まれているんでしょうか?

日常の何でも無い平凡な生活って刺激が無いから、漫画家を目指す人たちの中には近未来や歴史なんかの自分から遠い話を描いたりする人が多いんです。日常がつまらないから、自分の回りにあることがまんがになると思ってないんだと思います。でも遠い話ってどうしてもバリエーションが限られるからどっかで聞いたことのあるような話になりがちです。既成の作品を元にまんがを描いても、所詮オリジナルのものには勝てないし共感も得られない。まんがのテーマは、もっと自分の身近にあるということをしっかり認識して欲しいと思います。例えば学校、職場とかで片思いの人がいるとする。そのまま描いたら面白くないかも知れないけど、その片思いの相手が日本人じゃなかったらどうなんだろう? という風に置き換えるだけで面白くなってくるし、共感の得られるストーリーにもなってきますよね。なにもすべて遠くの世界に持っていかなくてもいいんです。もっと身の回りを見渡すとネタになりそうな人もいるだろうし、ネタになる人間の感情もそこにあったりする。頭で考えてもできないことが、人をよく見ているとできることもあるんです。まんがを見てまんがを描くより、人間を見て描くべきですね。


漫画紙面

 

―――具体的なストーリーでいうと?

そうですね。例えばニラレバとレバニラの話は、1つの同じ料理を二通りの言い方をする人がいて、それが面白いなと思ったのがきっかけです。それから学生の時って学校の近所にある同じ洋服屋でみんなが買ってたりする。だから学校に同じ服を着た人がいたりして、それがすごい気まずいんですよね(笑) またありがちな服だったらいいんだけど、同じ柄物の服だったりすると嫌なもんですよね。その二人がたまたま深夜食堂に来て、たまたまニラレバとレバニラを頼んだら面白いだろうなと思って。で、毎回同じ服だと相手のことが憎らしくなる。そういう実感がボクにもあるから、ああいうストーリーになったんです。

 

 

―――ネタに詰まった時はどうされてるんですか?

ストーリーを最初から作ろうとすると、パターンは何通りもないわけで… 二人が会ってどうなるとか、恋愛になるとか、ライバルになるとか、ストーリーだけだと何通りも作れない。だからボクはキャラクターを生かすことで、いわゆる一本調子のストーリーじゃない、別の話を作るようにしています。だけどやっぱりネタに困る時もあったりして、そんな時は担当編集者と話し合ってアイデアを出し合ったりします。でも最終的には、自分がトコトン考えて創るしかありませんね。

 


―――「深夜食堂」ではとても個性的なキャラクターが登場しますが、中でも好きなキャラクターはいらっしゃいますか?
ボクはそのキャラクターが好きじゃないと描けないと思っているので、みんな好きです。じゃないと思い入れができなくなってしまうので。だから、思い入れがない嫌な人は描けないですよ。だから嫌いな人が描けないのは弱点ではあります。

 

漫画家を目指す人に伝えたいこと


安倍夜郎先生-自画像

―――最後に読者へメッセージをお願いします。
まず、漫画家を目指す人の一番大切な素質はまんがを描くのが好きな人。そうじゃないと一日10時間以上も座ってられないですよね。あとレベルを上げるための努力をすることができることが重要です。まんがを描いている人って「描いたものを褒められたい人」「よりレベルの高いまんがを描きたいという人」の二通りいるんですが前者はデビューできたとしても、すぐに行き詰まるような気がします。自分が褒められようが、褒められまいが、自分がより良い作品を作りたい。と思って描いている人じゃないと、続けていけないと思います。まんがというのは掴みが大切です。新人漫画賞に投稿するなら、一番最初の2、3ページが面白くないとダメなんです。最初に印象的なシーンをドーンと見せないといけない。同じストーリーでも書き方によって全然違ってくるので。プロとアマの違いはその構成力だと思います。面白いことは出し惜しみしてはいけない。後に取っておこうと思っても、読者はそこまで読んでくれないですから。読者はパッと見てちょっとつまらなかったらそこで終わりなので。先のこと、デビューしてからのことより今描いているまんがに集中して、全力で描くべきだと思います。楽して漫画家になった人はいませんから。

 


安倍夜郎先生プロフィール

高知県、中村市(現四万十市)出身の漫画家。


2003年に小学館新人コミック大賞で「山本耳かき店」が大賞を受賞。翌年「ビッグコミックオリジナル増刊」に掲載され、41歳の遅咲きデビューを果たす。2006年から不定期連載がスタートした「深夜食堂」は徐々に人気を博し2006年にはドラマ化。2010年には第55回小学館漫画賞一般向け部門、第39回日本漫画家協会賞大賞を受賞する等ヒット作となった。http://abeyaro.com/saisin.html【安倍夜郎公式サイト】


王国の情報発信中!
チェックしてね♪

LINE

FACEBOOK

▲ページのトップへ