【大会議】”「グラゼニ」はこうして生まれた!!野球界のあんな話こんな話”トークショーレポート

ホーム > 【大会議】”「グラゼニ」はこうして生まれた!!野球界のあんな話こんな話”トークショーレポート

更新日 : 2016/03/23

「グラウンドには銭が埋まっている」──成果主義の世界であるプロ野球を、「ゼニ」の側面から描いた人気野球漫画『グラゼニ』。本作の作画を担当しているアダチケイジ先生、担当編集の田幸志朗さんを迎えて制作の裏側、また『グラゼニ』の魅力をご紹介いただきました。

 


れり

ラグビー愛好家が描く はじめての野球漫画


あ

──『グラゼニ』は野球をテーマにしていながら、選手の年棒や査定内容といった経済的な事情に光を当て一風変わった切り口の野球漫画です。

 

アダチケイジ(以下、アダチ): ぼくは野球ではなく、ラグビーをやっていました。いま旬のラグビーを。実は格闘技以外、スポーツはオリンピック中継などでもあまり見ない方で。この連載を始める前まで、周りに野球好きはいっぱいいましたけど、ぼく自身はまったく興味がありませんでした。今回、お話をいただいたときは、まだギリギリ20代だったこともあって「チャレンジだ」と思って受けました。

田幸志朗(以下、田幸): 原作者の森高夕次先生がもともと高校球児で、いまでもずっと野球好きなんです。企画が決まって「誰か、いい絵を描ける若者知らない?」というところからアダチ先生をご紹介しました。

 

──スポーツ漫画で、実際にプレイした経験がないとご苦労も多い気がします。

 

アダチ: そうですね。野球って絵的に非日常な動きが多いんです。サッカーだったら歩いたり、走ったり、蹴ったり、日常生活でも行う動きの延長があるのですが、野球の投げる、打つ、スライディングするのは、ふだん誰も行わない動きだと思います。遅刻する理由でスライディングする、とか聞いたことないですよね(笑)。

田幸: 『グラゼニ』は野球漫画ですが、野球を行っていない場面の方が多いんです。逆に、プレーシーンだとアンケートでの人気が落ちることもあって。

アダチ: 申し訳ないとしか言えません。

田幸: 意外と『モーニング』読者の年齢層が高いのか、夏之助や新人選手よりも、監督やコーチに感情移入されるのか、鈴木監督と監督のマネージャーである杉浦の二人は特に人気が高かったです。また、ストーブリーグの出来事、契約更改やトレードなど、そういう話はグンとアンケートでの結果が良くなります。また、犬の回も人気がありました。

アダチ: (犬は)某巨大掲示板では叩かれてしまいましたけどね(笑)。

田幸: それは知らなかったなあ(笑)。夏之助がトミー・ジョン手術を受けて、復帰までだいたい1年半くらいあるのですが、ほかのプレーヤーの年棒の話だけでは間がもたないので、家族を増やすことになったのが(犬を登場させた)きっかけだったと思います。

アダチ: 話の展開上、かなりシリアスになっていたので、和ませる意味あいもあったのですが、なかなか難しいものです。

田幸: 『グラゼニ』は週刊連載なので、週刊で読む読者を大切にしたいという意識があって、当初から意図的に10週のうち1週くらいは野球から離れた、箸休め的なエピソードを盛り込むことにしていました。定食屋のエピソードなども、そういう流れのなかで生まれたものです。

 

──夏之助が結婚するのもそういった流れからでしょうか?

 

田幸: 夏之助がメジャーに行って、結果的にポスティングに失敗し、文京モップスの一員になるわけですが、その半年くらい前から、これまでのシリーズを終えて、新章としてスタートしたいと提案していたんです。そしたら、森高先生から、じゃあ夏之助は結婚した方がいいな、という流れになって手も繋がないうちにトントン拍子でくっついてしまった(笑)。

アダチ: まさに漫画のダイナミックなところですね(笑)。人間=お金と言ってしまうと、誤解される方もいらっしゃるかと思いますが、結局、生物のなかで人間だけがお金という概念を持っていて、お金と人間って切っても切り離せないところがあると思うんです。極論ではありますけど、お金を真正面から描いたら、人間そのものが描けるんじゃないか? そう思ったのが、本作を描こうと思ったきっかけです。だから野球をぼくのように全く知らなくても、一応読めるようにしようというのが目標としてありました。

『グラゼニ』における 原作者と作画者の役割分担


た

──さきほどから原作者である森高先生のお名前が出てきていますが、本作での原作者と作画者の関係はどんな感じでしょうか?

 

田幸: 『グラゼニ』の場合は、原作者と作画者が直接連絡を取らないことを前提にして、制作を進めています。僕がアダチ先生の担当を行っていますが、森高先生には森高先生の担当者がもう一人いるんです。4人で制作を行っています。

アダチ: 森高先生の描かれた物語にぼくが口を出すことはないですし、逆に森高先生からぼくの作画に対して何かはないです。そこは、お互いプロ同士で仕事をしています。

田幸: 森高先生もアダチ先生を信頼されているので「ここから先はアダチくんの好きに描いていいよ」と任されているところもあります。たまに左投げだった選手が右投げになっていたり、背番号50の選手が3人くらいいたりすることもありますが……。

アダチ: (森高先生は)アバウトというか、勢いで描いているところもあるので(笑)。

 

田幸: 『グラゼニ』では選手や解説者、監督の年棒など、あまり表に出ないところがモチーフになっているのですが、原作の森高先生がほぼ想像で「こうなんじゃないかな?」というところを、森高先生の知り合いや我々編集者の知り合いのツテで補強取材しながら描いています。選手や監督に話が聞けたときは「やっぱりそうだったんだ」ということが多いです。

アダチ: 取材に行くときは、(森高先生と)だいたい一緒に行っています。劇中に「ブルーソックス」が登場しますが、そのときはボストンに行ってフェンウェイ・パークを見学し、上原(浩治)投手にも取材しました。「ボストンまで行ったのに、あまり似なかったね」なんて言われて。個人的には良い思い出になったな、という感じです(笑)。

田幸: ボストンのときは前任者が担当で、実はぼくは行ってないんです。

アダチ: 田幸さんの前任の担当さんは、東福岡高校のキャプテンをしていて、甲子園を目指していたバリバリの高校球児でした。もうすごく怖くて。「お前、野球を四文字で説明してみろ」と無理難題を言われたこともありました。「無我夢中です」なんて、すっとんきょうなことを言ってお茶を濁した思い出もありますね(笑)。

田幸: 休日でも(アダチ先生の)職場の近くまで行って、部屋の明かりを確認して帰ったりしていたみたいです。怖いですよね(笑)。

アダチ: マニアックですけど『ストーカー逃げ切れぬ愛』を彷彿とさせるような(笑)。でも仕事は結構、任せてくれたのでやりやすかったです。野球素人のぼくにいろいろと教えてくださいましたし。担当を代わったいまでも、時折、助言してくれます。

田幸: 一方、森高先生はもともと(プロ野球選手の)セカンドキャリアが気になっていて。たとえば、選手を引退して球団内部にスタッフとして入る方や、飲食店の経営者になる方、解説者になる方がいます。なかには全く別のスポーツをされる方もいて、そこを調べるのがすごく好きだったんです。選手名鑑があると思いますが、いつも後半のスタッフの方から見るような方ですしね。

 

──『グラゼニ』を作画していく面で気をつけていることはありますか?

 

アダチ: 普通、野球漫画だと、大ゴマを使ってカッコ良く投げる場面が多いと思うんですが、『グラゼニ』は甲子園の優勝を目指したり、ライバルとの対決を主軸にした漫画ではないので、いまどき珍しく、1ページを4段に割って、9コマくらいで見せることが多い。小さなコマで野球の試合を絵にして選手の表情を描くとなると、分かりやすさが何よりも重要で。

田幸: やっぱり無駄ゴマみたいなものはないですし、コマが細かいと文字数も多くなって、そういう漫画って読むのが面倒になったりすると思うんです。『グラゼニ』は他の漫画と比べても文字数が多い方なのに、そう感じさせないのは、さすがだなと思います。

アダチ: だいぶマニアックな話になりますが、漫画には読みやすいものと読みにくいものがあると思うんです。その違いは何かと考えると、文字数の多さもあるのですが、コマの配置や大きさも影響していると思います。
もちろん、文字数が多くて情報も多い漫画を喜ぶ方もいらっしゃるとは思うのですが、描くときに意識しているのは小説ではなく、どこまで詩に近づけていけるか、なんです。つまり、どこまで削ることができるか、ということで。
特にプロとして限られたページ数で漫画を描くときには、カッコ良いからと言って、ホームランシーンばかり描いてもスカスカの漫画になりますし、大人が満足できるような本格的な蘊蓄がたくさん入った野球漫画を描こうとすると読みにくいものになる。頭にスッと入ってこない、というか。「エッセンスだけを抜き取って、それを読み手に伝える、それが漫画だ」と森高先生にもアドバイスされました。

連載5年目を迎え ますます広がる『グラゼニ』ワールド


り

──『グラゼニ』は『モーニング』での連載以外に、宣伝の面でも新たな挑戦をされています。

 

田幸: 『グラゼニ』はこれまでに、三井ゴールデングラブ賞や四国アイランドリーグplusさんとコラボした企画を行ってきたのですが、どうも男性読者しか増えていないような気がしていて。最近、「カープ女子」に代表されるように女子の間でもプロ野球が盛り上がってきているので、この流れに乗っからせてもらおう、と考えて企画したのが「グラゼニ女子」です。野球好きの女の子や漫画好きの女の子が、その女子力で『グラゼニ』のPRをしてもうらおう、と。オーディションを行わせていただいて、10名採用させていただきました。その一人が、本日、お越しいただいた若菜(奈津美)さんです。彼女の経歴で面白いのは、読売巨人軍のダンサーチーム「チームヴィーナス」にいて、いまは文化放送のディレクターをされていることです。

若菜奈津美(以下、若菜): 「チームヴィーナス」は、球場で踊ったり、ホームラン人形を渡したりする巨人軍の公式マスコットガールです。弟から、今回の企画の話を聞いて応募したのがきっかけです。

田幸: 生意気にも「グラゼニ女子」で記者会見も行わせていただきました。おかげさまで、そこからちょくちょく取材依頼が来たり、若菜さんつながりで、文化放送の他の番組のプロデューサーが興味を持ってくださったりして、彼女経由でラジオ局を中心に『グラゼニ』の宣伝ができるようになりました。まさに狙い通りという感じです(笑)

若菜: グラゼニ女子はメンバーが10人いるのですが、それぞれみんな個性豊かで、良い意味でバラバラなんです。グラビアアイドルやレースクイーンの子もいますし、私みたいな裏方業務でよく素性が分からない子もいるのですが、みんな野球が大好きで、野球を盛り上げつつ『グラゼニ』も盛り上げようという感じです。

アダチ: グラゼニ女子のみなさんと会うと、もう目が覚めますね。ずっと眠いんですけど、この前、グラゼニ女子の楽屋に挨拶に行かせていただいて目が開きました。もう存在自体がとてもありがたいですね。

田幸: 3月3日発売の「モーニング」14号から、もともと20ページの『グラゼニ』の21ページ目に「グラゼニ女子」の漫画を始めています。

 

──最後に、今日お越しいただいたみなさんにひとことお願いできますか?

 

若菜: 野球のルールが全然分からない女性の方もたくさんいると思うのですが、『グラゼニ』は野球を知らなくても、普通に読むことのできる漫画で。特にプロ野球界の裏側がすごく分かりやすく描かれているので、一度手に取って読んでいただきたいなと思います。

田幸: 『グラゼニ』は基本的に1〜2話くらいで完結しているエピソードが多いので、巻数に関係なく、どこからでも入れると思っています。ぜひ手に取っていただけると。僕を含め『グラゼニ』チームは、下世話な話が根本的に好きなので、ずっと続けられるんじゃないかと思っています。これから、まだまだ新展開もありますので、グラゼニ女子ともどもよろしくお願いします。

アダチ: 漫画家の日常は、担当編集者と近くのコンビニの店員としか会話しないような状態が2〜3ヵ月続くこともあります。1週間仕事場から出ないことなんかザラなので、今日は、こうして実際に『グラゼニ』を読んでくださっているみなさんにお会いできて本当にうれしかったです。ありがとうございました。

王国の情報発信中!
チェックしてね♪

LINE

FACEBOOK

▲ページのトップへ